2010年03月18日
ケータイ国盗り合戦が地域振興策「国おこし」「国札」を投入
ケータイ国盗り合戦が、地域振興イベントとして、新たに「国おこし」「くにふだ」という取り組みを始めたようです。
退社後もお付き合いさせていただいてる方々経由で「何か新しいマネタイズ策考えてるらしいよ」と聞いていたのは、これだったのか。
ケータイ国盗り合戦、神戸のまちおこし応援キャンペーンを開始〜 ユーザーみんなの力で、いざ「国おこし」! 〜
- 「国おこし」企画の背景
『ケータイ国盗り合戦』は、ゲームを通して多くのユーザー皆様に実際に地方に足を運んでいただくことが地域活性化に繋がるという考えのもと、様々な地方自治体様や地方企業様との連携を進めてまいりましたが、今回SDFと共同で企画することにより、有名企業様だけでなく「町のお店やさん」をも巻き込んだキャンペーンの実施が可能となりました。 - 「国おこし☆神戸編」の遊び方
「国おこし☆神戸編」は、新アイテム「くにふだ(国盗り札)」を全5種類集めてゲームを攻略する期間限定ゲームです。獲得した「くにふだ」裏面のQRコードからアクセスすると、ゲームを達成することができます。
なお、「くにふだ」を取得するためには攻略対象スポットでの一定金額のお買物や寄付が必要となります(一部無料)。
※本キャンペーンに係る売り上げの一部は、SDFならびに地域振興を目指すNPO法人に分配されます。
地方の小売店鋪等でユーザがお買い物をすると、物理的なカードがもらえ、そのカード裏に記されているQRコードをスキャンする事で、ゲームを達成できると言うもののよう。
一見、コロプラのコロカのようですが、よくよく分析すると微妙に違います。
- 実施期間:
コロカ:永続的
国盗り:イベントとして一定期間 - 空間的展開:
コロカ:日本全国での展開
国盗り:1イベントとしては、狭い一定範囲にローカルに展開 - ユーザに対する期待消費額:
コロカ:数千円規模、比較的高価
国盗り:無料〜数百円規模、比較的安価
ということで微妙に軸ずらしされており、どちらかというとコロカ対抗というよりは、赤い鳥のお宝探検隊的な立ち位置ではないかと思われます。
赤い鳥等は、日本中から会員を地域に人を誘導するというよりは、ポスター等の物理的告知手段を利用して不特定多数の周辺住民を特定店舗に誘導することを主眼としています。
なので、全国で44万人いるとはいえ不特定多数にリーチしない会員サイトであり、また全国規模のゲーム性を持っている国盗りで、同様のローカル的な集客がターゲットになりそうなイベントを行って、どの程度動員できるのかには、疑問も残ります。
ですが、不特定多数の近隣住民にリーチしない代わりに近隣住民でない会員にリーチするので、それによる他地域からの流入が近隣住民にリーチしない事による減少分をもし上回ることができれば、赤い鳥以上の効果を生む事もできるでしょうし、また会員以外のアテンションは低いであろうとはいえ、現地でのポスター告知等も行っているでしょうから、そこから国盗りの新規会員流入を期待できるかもしれません。
成功するかどうか、なかなか気になる施策ではあります。
一方で、システム的な部分では大いに疑問が残ります。
今回のシステムについて発表後いろいろ調査してみたのですが、どうもこの「国おこし」専用にあらたなシステムを起こしたわけではなく、既存のシステムを流用しているようです。
プレスリリースには書かれていませんが、サイト内の遊び方を見てみますと、以下のような記述があります。
くにふだ裏面のQRコードからアクセスしてスタンプ&100コバンGET
※必ず獲得した場所でアクセスしてください。
これは同様にQRコードを利用した「龍馬伝」イベントと同様の要求であり、すなわち同じシステムを流用したと判ります。
位置ゲーの常識として、QRコード等ではURLが提供できるだけなので、そのURLが他人にバレてしまえば、ゲームの本来のクリア条件を満たしていない人でも、誰でもクリアし放題になってしまう、という問題があります。
その危険性を減らすために、QR経由でサイトにアクセスさせた後、ユーザの位置を確認し、QRが設置されている場所のそばにいる事を確認した上で、クリアした事を認定する形になっているわけです。
この対策を打っていても、ターゲットに実際に行ってはいないけれどかなり近くにはいて、かつQRで提供されているURLを不正入手したユーザは、ターゲットに行かなくてもクリアしてしまうことができますが、それに関してはまあ近くまで行っているのでクリアとみなしても実害はないだろう、というところで担保されています。
ですが、国札のように入手条件が「ターゲットを訪れる事+お金を使わせる事」という、位置的条件に+αの入手条件があるとなれば話は別です。
正当な入手者はお金を使わないとターゲットを入手できないわけですが、不正にURLを入手したユーザは、近くに行くだけでターゲットを入手できてしまう。
またユーザにとっても、立て看板に描かれたQR等とは違って、「くにふだ」という物理的実体を所有物として入手したにも関わらず、入手場所から離れれば特典の付与権利を失ってしまうと言うのは判りにくく、クレームの種になるとしか思えません。
これは大きなシステム的問題と思われます。
コロプラのコロカや赤い鳥のトレジャーカードは、その辺の問題を、カード一枚一枚に偽造不可能なシリアルナンバーを付与する事で解決しています。
シリアルナンバー形式であれば、絶対にカードを入手したユーザにしか特典付与が行われず、システム的な問題がありません。
もしかすると、コロプラはコロカ周りで特許を出しているとのことなので、その辺に抵触するのを恐れたのかもしれませんが、しかしちょっと調査すれば赤い鳥もシリアルナンバーカードシステム使っている(恐らくコロカより先に)のは判るはずですし、調査不足としか言いようがありません。
新システムを開発するとか一枚一枚違うシリアルを与えると言うのは非常にコストのかかる話で、既存システムが使い回せれば確かに導入コストは低いのですが、しかしそれに見合うシステムの質を得るために、他社は努力しています。
新たな収益源の柱として育てたいのであれば、それに見合う投資をしてしかるべきなのではないかなと、個人的には思います。
後、「くにふだ」は明らかにコレクターアイテム的な要素で収集欲を煽るべきなのに、くにふだの収集状況や、過去のくにふだにどのようなものがあったかの一覧をシステム上で管理できないというのも、片手落ちではないかなと思います。
コロカ等は単に物理的実体を手に入れるだけではなく、それを入手したと言う事をシステム上でも証明でき他のユーザに示す事が出来るので、ユーザの名誉欲に火をつけ収集心を煽る事が出来ますが、単に物理的実体を入手できるというだけでは、ユーザに収集するモチベーションを喚起させる上で、弱いのではないかと思います。
やはり、過去どのような「くにふだ」があったか、そして各ユーザがどれだけ収集できたかという事を、システム上でも管理できるようにすべきではないかと思います。
もっとも、先述したように物理的入手を完全にシステム上で証明できる仕組みになっていない以上、システム上で管理できるようにしてしまう事で、かえって不正行為を誘発してしまう事になる可能性もありますが…。
2010年03月16日
コロプラが位置ゲープラットフォームを検討中?iPhone対応も?
最近、コロプラの副社長千葉さんが、Twitterでつぶやき始められて話題を呼んでいます。
その中で、少し前にすごく気になる情報がありました。
これが本当ならすごいことだと思います。
位置ゲーにはいろいろ、例えば位置情報詐称等の独自のノウハウがあるのですが、一方でそういったノウハウは技術というより半分大道芸のような範疇のもので、なければ困るのですけど全く位置ゲーの本質でもなんでもありません。
なので、プラットフォーム化してそんなマニアックなノウハウはプラットフォームに任せつつ、本質的なゲームアイデア等で勝負できる場があればなあ、作りたいなあというのが、位置ゲー/ジオメディア業界者の間でも話題になっていました。
が、個人的にはなんとなくコロプラさんはそういう方向には向かわない、というステレオタイプを持ってしまっていたため、そういうプラットフォーム化はmixiさんとかモバゲーさんを動かして何とかしなければ、と思っていました。
それは完全に偏見であったようで、最近のコロプラさんは、千葉さんがつぶやき始めたこと等も含め、どんどんオープンな方向に舵を切っているように感じます。
位置ゲーの特殊ノウハウの粋をもったコロプラさんが、それをプラットフォーム化して開放してくれるのであれば、位置ゲー企画者に取ってこれに勝るものはないと思います。
ちょっと、その他のTwitter上のつぶやき等も含めて、どのようなプラットフォームになるかを 想像してみました。
(これは、周辺情報等から推理した飽くまで予想です。実際にコロプラに取材したりしたわけではないのでその点留意ください)
1.キャリア毎の位置取得仕様差、位置詐称対策ノウハウ等を隠蔽化
やっぱり、位置ゲー参入者にとって敷居が高いのは、ケータイのキャリア毎に違う位置取得仕様の差だと思います。
埋め込むHTMLとしてFORMを使うものありAを使うものあり、独自URLを経由させるものあり独自スキーマを定義する物あり独自属性を定義する物あり、戻すデータもPOSTで返すものありGETで返す物ありHTTPヘッダで返す物あり、測地系/フォーマットもバラバラ、と見事に違います。
それでもただ位置を取りたいだけなら全部洗い出せばすむ話なのですが、位置詐称対策まで考えると、当然仕様が違えば攻撃者の攻撃方法も異なってくるため、個別に攻撃者の気持ちになって攻撃方法を洗い出し対策を考えるのは、既に何度か位置ゲーを運用済みで問題を熟知している主体でなければ、なかなか困難な話です。
コロプラが位置ゲープラットフォームを作ると、その辺のノウハウを意識しなくても、 位置取得タグを一つ埋め込むだけで、戻り値は特定のフォーマット、測地系に沿った物を返してもらえるようになると思います。
位置詐称への対策も万全、特にコロプラの詐称対策は、こちらのまとめでも示した通り、位置取得と仮想通貨を結びつけてもリスクは少ないレベルの、業界随一のものです。
コロプラ位置ゲープラットフォームの元で、技術的には位置詐称対策や、企画的には詐称リスク等といったものに煩わされる事なく、純粋にアイデア勝負の位置ゲーがたくさん産まれるのではないかと期待します。
2.ユーザの一瞬をプラットフォーム参加ゲーム内で分かち合う事で、多数の位置ゲーが共存可能な場に
他の種のゲームにない位置ゲーの特徴として、ユーザの「一瞬」という不可分な資源を奪い合うタイプのゲームである、ということが挙げられます。
例えば、DSでマリオカートとファイナルファンタジーを共にプレイする場合、片方を家でゴロゴロしながら1時間プレイ、片方を電車で移動中に1時間プレイするのに、本質的な差はありません。
その意味では、普通のゲームでの競争は時間という、ユーザの限られた資源であるとはいえ、ある程度は可分な資源を取り合う程度の競争でしかありません。
しかし位置ゲーでは空間の要素が入ってくる分、家でゴロゴロしている1時間と電車で移動中の1時間は等価ではありません。
特に高速移動中等では、ユーザがある空間を占めるのは「一瞬」なので、その一瞬に起動するゲームとして選ばれるかどうか、という不可分な、オールオアナッシングな競争になります。
これでは、ゲームそのものの質勝負以前に、普通のソーシャルゲーム以上にネットワーク外部性が作用し、先行し既にマスを持っている者が有利と言う状況になり得ます。
こういう状況は、ビジネスとしてはともかく、(元ですが)提供者としてもプレーヤーとしても位置ゲーというものを愛する立場としては、あまり面白い結論ではありません。
その状況を回避する方法として、位置ゲーの中立的プラットフォームのようなものが各ゲームに代わってユーザの位置を取得し、その結果を各ゲームにブロードキャストし、各ゲームはブロードキャストされた位置情報を元にゲームを進める、というシステムの構築が考えられます。
そのように位置取得を共通化すると、サイトに人が来なくなるのではという懸念もあるかもしれませんが、受け取ったブロードキャストをキューに入れておき、実際のゲームイベントは各サイトにユーザが訪れた際に、遅延発火するような形にしておけば、そのようなシステムにしたからといってユーザのサイト訪問回数が減ることはありません。
むしろ、各サイトが独自に位置取得をやっていれば、絶対に「一瞬」を割く対象としてユーザに選ばれなかったであろうようなゲームであっても、 ユーザに選ばれることができるという利点があります。
位置取得部分を共通化することによって、不可分な「一瞬」の奪い合いだった位置ゲーが、他のゲームと同様の可分な「時間」の奪い合いに進化させられるわけです。
現在のところ表に出ている発言で判断する限り、コロプラの位置ゲープラットフォームは、この位置ブロードキャストに対応すると言っています。
本当にコロプラの位置ゲープラットフォームがブロードキャストに対応し、それに参加する位置ゲーが増えれば、また一歩位置ゲーが新しいステージに進むのではないかと思います。
3.iPhoneにも対応して、世界を舞台にした位置ゲーのプラットフォーム化に
項目1.で、コロプラの位置詐称対策ポリシーが高い事に触れました。
まさにこの詐称対策への敷居が高い事が、コロプラがこれまでiPhoneに対応してこなかった理由で、
iPhoneだと脱獄等でユーザが嘘の位置情報を扱えてしまうので、位置が即仮想通貨と結びつくコロプラでは、iPhoneに対応したくてもできなかったという状況だったようです。
ですが、詳細は不明ですし教えてもらえないですが、どうも最近何か脱獄対策を中の人が思いついたようで、iPhone版の検討に入ったという情報も流れています。
まだ検討ステータスで本決まりではないようですが、もしコロプラがiPhone対応したとすると、それはとりもなおさず位置ゲープラットフォームもiPhone対応するという事でしょう。
そうすると、ガラケーオンリーのプラットフォームであれば世界対応は難しいわけですが、iPhoneだと世界どこでも共通に位置が取れるわけで、位置詐称対策まで施されたコロプラプラットフォームが一気に世界の位置ゲー開発のデファクトになる可能性すらあります。
プラットフォーム開発を表明したつぶやきで、コロプラGMが「みんなで世界だー」と言ったと書かれているのは、その辺を踏まえてではないでしょうか。
4.残念ながら、失われる位置ゲーの系譜も
コロプラは位置取得に厳密さを要求していますので、基本的には扱われる位置情報はGPS限定(一部DoCoMo、Willcom除く)です。
位置ゲープラットフォームも、基本的にはその路線を踏襲するでしょう。
ですが、以前位置ゲーの歴史の記事でもまとめた通り、位置ゲーではあえてGPSを使わずアンテナ位置情報等の不確かな位置情報を、ゲーム要素として積極に取り入れているようなタイプのゲームも存在します(いわゆる、アンテナ奪取系)。
これらは、原理上コロプラプラットフォームの提供するであろうGPSベースの位置情報では成立し得ないので、コロプラプラットフォームの登場で位置ゲーがさらに隆盛しても、それに乗れず衰退する可能性があります。
もっとも、歴史のまとめ記事でも書いた通り、元々アンテナ奪取系のゲームは奪い合いのゼロサムゲームで、ユーザの収容限界もあり今後も伸びる事は期待できなかったので、仕方ないのかなとも思います。
また別にプラットフォームに乗れなかったとしても、外圧でお取り潰しの憂き目にあうとかそんなわけではないので、問題もないのかなと。
以上、今表に出ている情報から、コロプラの位置ゲープラットフォームがどのようなものになるのか、というのを夢想してみました。
2010年02月22日
すこし先のARに必要な方向性3つ
別にARの専門家でも何でもないのだけど、位置情報のことはある程度判ってる立場から、今後のARに必要になるのでは?と思うことを3点ほど。
これまでBlogWrite使って来たけど、Mac使い始めたのでectoに乗り換えたので、投稿テストも兼ねて。
視野を計算するのではなく、視野から情報を得る方向性に
セカイカメラはもちろん、iPhoneやAndroidで今出て来ているARアプリケーションは、みんな情報を座標で管理して、その上でデバイスの位置と方向を判定し、画面に重畳する情報を計算する路線ですが。
今はまだそれしか実現方法がないだろうから仕方ないとは思うけど、正直その方法だと誤差が大きすぎるだろう。
GPSは数mから数十mは平気でずれるし、電子コンパスもそこまでの精度はない。
GPSの精度向上は、準天頂衛星やIMES等で向上はするだろうけど、それでも数cmから数十cmはズレるだろう...数cmはともかく数十cmのズレは、現実に拡張現実を重畳するソリューションとしては致命的だろう*1。
一番難しいのは垂直方向の精度だろう。
俯角・仰角センサの精度もさることながら、実は高度だけは、正確なその地点の高さをデバイスだけで取得することはできない。
以前に一度記事にしたことがあるように、GPSから取れる高度は回転楕円体という仮想地球面からの高さなので、実際の海抜高度に直すには、ジオイドという、それぞれの土地で用意された基礎データを用いて、補正計算する必要がある*2。
結局、視野とそれに重畳する情報を、視野以外の情報から計算して導こうとするから、誤差が積み重なって『ショボい』AR体験になってしまうわけだ。
マジで『電脳コイル』の世界を目指すなら、現状のアプローチでは難しいのではないかと思う。
視野と重畳する情報であれば、視野から情報をもらってしまえば、得た情報をそのままその情報の発信源に重ねれば、原理上ズレることはあり得ないので、リアルなAR体験になるはず。
そのような技術になり得るものは存在していて、以前も採り上げた事のある可視光通信だ。
可視光通信というと、今実用化されているところでは、専用の受光素子を使った赤外線通信的なアプローチのイメージしかないかもしれないが、カメラ等を受光素子として、複数の情報源から情報を取得し、かつ情報の発信方向も特定するような技術も進んでいる。
もちろん、可視光通信だけで全ての情報を配信しようとすると、情報の数だけ通信源を用意しないといけないので、現実的ではないとは思うし、視野を構成する情報だけでなく利用者の自位置も大事な情報なので、GPSや電子コンパスが使われなくなる、ということはないだろう。
むしろ、可視光通信は単に視野上の情報の位置が得られるだけでなく、情報上に発信源の位置や高度を載せれば、受信者が位置測量を行う上での情報源にもなり得る。
現在ケータイがGPS衛星とケータイ基地局とのハイブリッド測位を行っているのと同じ感覚で、将来の可視光通信対応端末はGPSと可視光通信のハイブリッド測位に対応したりするんじゃないだろうか。
まだ現時点では実現は難しいと思うので、将来本当に形になる際に、採用されているのが可視光通信かどうかは判らない。
もっと進んだ技術が採用されている可能性もあるけれど、いずれにせよ、AR技術がもう一歩リアルさのブレークスルーをするには、『視野から情報を得る技術』は、避けて通れないのではないかと思う。
屋内位置情報を記述する、汎用的な仕様を
まあ屋内とか言わなくても屋外でも、現実空間に重畳する情報をどう記述するか、例えば3Dモデルを記述するなら、どういう仕様を標準にして、どちらを向いているかをどのように記述するか、とかの標準を決める事は必要だと思う。
しかし、実態をどう記述するかはともかく、『位置を記述』するというだけであれば、屋外の情報に対してはWGS84の経緯度ベースで記述して問題ないだろう。
問題は屋内の情報。
まさかARが屋外だけをターゲットにしているとは思えないし、かといって屋内のエアタグが屋外から見えたり、 逆に屋外のエアタグが屋内から見えたりしても、興冷めだろう。
しかし、情報の管理が経緯度ベースで行われている限りにおいては、建物の壁とか天井とか、そういった視線を遮断するもの全ての情報がシステムで管理されていなければ、屋内屋外でのタグの出し分け等無理な話だ。
いや、仮にこの世の全ての地物情報がシステム内で管理されていたとしても、現実的な速度で視線の遮断計算を行うのは無理だろう。
考え得るのは、屋内ではGPS等汎用的な測位デバイスは精度が低くなって利用不可になってしまうので、WiFiを用いたPlaceEngine等屋内に有効な位置測位手法に切り替え、その位置特定デバイスからその建物独自の屋内専用座標系で情報を返してもらうことで、屋内/屋外の情報切り替えとその情報重畳に用いる座標系の切り替えを行うという形だ。
実際、PlaceEngineは、屋内での位置を特定するソリューションとして、実証実験を行ったりしているが、 その時の屋内情報管理を経緯度を使って行ったとはまさか思えない。
その時に使ったような、屋内の位置情報を定義し記述する仕様を、どのような場所や建物にも適用できるような形で汎用化し、それを使って屋内の情報を管理できるようにする必要がある。
中央集権ではない、分散したサイバースペースの構築
ARで現実世界に重畳するサイバースペースは、なぜか皆、中央にサイバースペースの森羅万象を司る巨大サーバがいて、それに接続するイメージを多くの人が抱いているようなんだけど。
でも、サイバースペースが模しているところの、リアルスペースの森羅万象は、そんな中央集権で成り立っているわけじゃないよね。
世界の片隅で起こっている現象は、遠い宇宙の果ての宇宙意思にお伺いをたてた結果、というわけではなくて、現象の起こった全くローカルな局面での、物質と物質、粒子と粒子の物理的相互作用の結果として発生している。
なんでサイバースペースだけ、中央集権でないといけないのか?
そういう疑問を持ってくると、いろいろ中央集権方式のサイバースペースで生じる、おかしな点も見えてくる。
まだ現状レベルの、情報を検索してきて重畳する程度の一方通行のAR(或いは双方向であっても、情報を仲介しての双方向性でしかないもの)ならばさほどおかしくもないのだけど、将来的にデバイスノード同士がAR空間内でインタラクションを起こすようなレベルになってくると、そのおかしさが顕著になってくる。
今目の前に存在する、別ノードと今すぐインタラクション起こす必要があるのに、なんで遥かネットの彼方にあるサーバ様にお伺いを立てないといけないのか。
今すれ違うノードと瞬時的なインタラクションが必要なのに、なぜネットワークの遅延や中央サーバの過負荷、果てはネットワーク圏外やサーバダウンの影響を受けないといけないのか。
どう考えても、インタラクティブなAR経験を本質的に実現しようと思うと、3G回線で回線確保して中央サーバで集権的に処理、という発想は破綻する。
もっと、末端ノード同士がWifiやBT、可視光通信なんかの近接通信手段で、ローカル的にインタラクションを解決していかないと無理だろう。
全体の整合性は、ローカルでの結果が段階的に波及していけばよいのではないか。
その意味では、少し前に話題になった、SUICAのDNS的分散システムに近いような発想が、将来のAR実現インフラには必要になってくるのではないか。
また、なんか、そっちの方が楽しそうでもある。
中央サーバで一元処理されている限り、AR世界は 予測可能なものにしかならない感じがするが、ローカルでの処理→波及モデルだと、ARの世界でもバタフライ効果のようなカオスな振る舞いが見られるようになるかもしれない*3。
これらの本質を追求していくと、新しいガラパゴスが生まれる可能性も
これら3つの、本質的AR実現のための方向性のうち、最後のを除いた2つ(可視光通信や屋内位置情報)は、既に日本では「シームレス測位*4」というキーワードで、gコンテンツ流通推進協議会等で議論されている。
官や通信キャリアなんかも参加しているこのコミュニティで議論されていることは、準天頂衛星にせよ、可視光通信やIMESにせよ、非常にゆっくりとだし派手さもないが着実に、実現化していっている。*5
が、これらの技術的進歩は、最先端ではあるが世界に共同歩調を強いることは難しいので、日本独自の発展になりかねない。
そうすると、またこの辺の機能やインフラに対応したデバイスは、世界標準を目指すiPhoneなんかには搭載されず、日本の独自デバイスのみ準天頂衛星対応とか可視光通信対応機能が付いたりと、また世界標準とは異なる日本ローカルの独自進化を遂げかねない。
ちょうど、日本のガラパゴスケータイは、iPhoneよりよほど早く、10年近く昔から位置情報・GPSに対応していたり、電子コンパス対応機種もあったりしたけど、 独自進化し過ぎていてガラパゴス化した、と言われているように。
そうすると、今後ARに取り組む主体は、次のような究極の選択を強いられるようになる可能性がある。
- 世界標準でないものはクソ、日本独自のものなどクソ、というスタンスを崩さず、世界標準のデバイスやGPS、電子コンパス等の技術だけを使って、ずっと「ゆるふわ」ARを続けていく
- ARの本質を追って、日本独自の技術・デバイスであろうと取り入れて本質的なAR体験を追及していくが、世界からは孤立していく
或いは、別の選択肢もあるだろう。
- 日本の独自進化も受け入れつつ、世界の標準も意識し、また日本の進化を世界に紹介し、積極的に両者の融合を模索していく
どれを採るかは...AR取組み主体の選択次第。
*1) もちろん、情報までの距離や粒度にもよるけれど。
*2) 新しく実測して作るデータであれば、重畳情報の方の高度情報を、海抜でなく楕円体高度で揃えるというアプローチもあると思う。
*3) まあ、妄想レベルだけど。別に現時点でローカル分散システムを採っているSUICAが、カオスになっているわけでもないし。
*4) GPS/Wifi測位等のデバイス切り替え的シームレス、屋内/屋外位置情報の切り替え的シームレス等、シームレスの意味は多義的(と、私は理解してます)。
*5) ただ、念のため書いておくとgコンテンツ評議会が準天頂衛星等の実現主体である、というわけではない。gコンテンツは今後実現することについて、その利用法等について議論する場。
2010年01月14日
馬鹿の言動は確かにJSF氏に責任はないのだけれど、良識に訴えたい
一つ前のエントリ関連。
bn2islander 政治 JSF氏は普天間基地の県外移設はあり得ないと言っているわけではなく、軍事的に見てあり得ないと言う話をしているだけだと思うんだけどね。読解力がない人、脊髄で考える人が意外に多いのだという印象
Mukke 沖縄, 軍事, 議論 JSFさんは多分歴史の話とかに深入りするつもりはないだろうから,合理性があることを認めるのであれば別段彼と議論する必要性はないと思う。その点においては合意ができてるわけで。
kokogiko ブックマークを削除する コメントを編集する id:Mukke 軍事視点のみの前提を無視し最終結論だと思い込み、使えないなら破壊しちゃえなんていう取り巻きもいるから、その辺はJSFさんに、政治的に沖縄無理な際の次善策を提示する形で、解毒してもらう必要があると思う
Mukke meta id:kokogiko 取り巻きの言動は別に彼の責任ではないでしょう。/id:Apeman 別に技術論(純粋なそれが有り得るかとかそういうのはひとまずおいといて)に絞った議論があってもいいと思うんですけどね。
お二方のおっしゃるとおりで、JSFさん自身は政治的結論ではなく軍事的観点からの見解を述べておられるだけですし、また彼の意図を取り違えて我田引水している馬鹿がどれだけバカな言説を振りまこうとも、そのこと自体はJSF氏の責任ではありません。
なので、私としてはJSF氏の良識に訴えるしかないわけですが。
でも、思い出してみてください。
少し前に、似たような話ありませんでしたか。
「反日上等」騒ぎの時です。
あの時、カルデロンさん一家のような入管行政の不条理に翻弄されている人達への排外主義反対を唱えてデモをした際、一部のデモ参加者が「反日上等」等を掲げたことに関して、後ろ弾になる等と厳しく批判され、飽くまでも反日上等にこだわろうとした人に「極左・在特会と同じ」みたいな声もかけられましたよね。
でも、冷静に考えてみると、原理原則的には、言論の不自由な社会ならともかく、この社会において「反日上等」を掲げることには、何も問題はないわけです。
むしろ、マジョリティの真綿で首を絞めるような、無言の同化圧力の元におかれたマイノリティにとっては、その圧力に屈することなく異議申し立てができるんだというアピールこそが意味を持つのであって、それを「自粛しろ」と言ってくる圧力の方が、真綿の同化圧力のように忌むべきものであり、だからこそあれほど「反日上等」にこだわった人達は反発したのでしょう。
デモの行われた背景を問わず、純粋に原理原則のみで語るならば、「反日上等」を掲げることに何の問題もないですし、むしろそれを「自粛しろ」という声の方に問題があったはずです。
ですが、あの時はデモの背景として、具体的に入管行政の不条理にさらされている人達がいて、下手なやり方をするとそういった人に被害が及ぶ可能性があった。
だから、原理原則はおいておいて、とりあえずデモの時だけでもそれは封印しましょう、という呼びかけがあって、いやそれでも原理原則をひっこめない、という人も出て、そういう人に、「極左・在特会と同じ」みたいな声もかけられたわけです。
あの時は、状況を無視して当たり前の原理原則に固執した人は、非常に責められたわけです。
そういう状況だったので、私は、封印しましょうと呼びかけている人には、原理原則にこだわっている人の立場を代弁し理解しましょうよと言いつつ、原理原則にこだわっている人には、TPO次第では原理原則をひっこめる事もあってもいいんじゃないの?と呼びかけて、下記の3エントリを書いたりもしたわけです。
翻って、今回の問題です。
確かに、軍事的観点からの原理原則で語っているだけで、それが政治的結論だと主張しているわけではないJSF氏には、何の責任もありません。
ですが、彼の軍事的原理原則論を、政治的他ファクター全てに優越する最終結論だと勘違いした、脳内お花畑の馬鹿共が、いっぱい沸いて、先のエントリーのコメントをピックアップするだけでも、これだけ痛いことを書き散らかしているわけです。
- 台湾は世界的にある程度の認知を得ている主体性ある行政単位であることから、日本が実力行使するには外交レベルでの制約が発生し、また対抗能力としても十分に脅威となる戦力を保有しています。
対して、沖縄の場合は外交レベルの制約は発生しません。
沖縄で独立運動ないし暴動が起き、ソフトレベルでの沈静化に失敗した場合、機動隊なり自衛隊が暴動鎮圧にでることでしょう。
なにせ、沖縄には組織的抵抗ができる軍隊はありませんし最悪ゴリ押し可能です。
よその国からは「国内秩序の回復を図った」、としか捉えられないのではないでしょうか? -
「政治的に沖縄に基地が置けない」という仮定をクリアするためには、現実とは大きく異なる条件が必要でしょう。
たとえば、沖縄県民によるIRAばりの大規模武力闘争で日本中で爆弾テロが頻発している、あるいは架空戦記よろしく沖縄が中国領になっている、等々。
それを提示されない限り、屋上屋を重ねても思考実験としてすらも意味がないですよ。 - 非常に興味深い前提(「沖縄が敵に回る」や「台湾に兵を駐留できないのと同じようなレベルで、普天間基地の沖縄県内移設はできない」)を拝見致しました。
その前提で、相当非道な選択肢を出してみます。
それは「自分達が使えないのであれば、対抗勢力にも使わせることができないように徹底的に破壊し消滅させる」というものです。
...どの言説取り上げても、「沖縄」を「チベット」、「日本」を「中国」と置き換えても、違和感がないような話ばかりです。
こういう馬鹿共が、同じ口から中国のチベット支配を非難していたりしたら、笑い話以外の何者でもないのですが。
そしてそいつらの馬鹿言説の拠って立つところが、彼らが無謬だと信じているところのJSF氏の純軍事的結論なわけです。
JSF氏が純粋に軍事観点の原理原則からだけの語りをしているのは判ります。
その事において、JSF氏にまったく責任はない。
ですが、その原理原則だけでは政治は語れないのだ、ということを、誰かが語り、馬鹿連中を解毒しなければいけないわけで、その意味もあって私が先の記事を書いたわけですが、しかし彼の意図を理解していない馬鹿な連中にとっては、私などが解毒のために語っても、
軍事(安全保障)ってな、政治の最も重要な部分。
軍事的要求が、政治の全てに優先されるのは当然。
だって、国家が危殆に瀕し、或いは滅亡するかもしれないのだから。
こんなことは、幼稚園児だって知ってる。台湾が中国の完全な支配下になる影響を考えろよ。
こんなことは、胎児だって知ってる。ちょっとレベル低すぎ。
JFSも、こんなガキは相手にしたくないだろ。
こんなことは、生殖細胞だって知ってる。
私等幼稚園児、胎児、生殖細胞以下の存在なので、何を語っても聞く耳を持たないわけです。
だから、彼らを解毒できるとすれば、彼らが無謬だと信じるJSFさんその人以外にはいないわけです。
JSFさんが、意図を取り違えるような馬鹿な連中が馬鹿言説をふりまこうと、自分が言ったことじゃないのだし責任なんかない、馬鹿共はほっとけ、とシカトを決め込むのは自由です。
本当に責任はないのですから。
ですが、もし彼らの中共によるチベット蔑視並みの沖縄蔑視言説を止められるとすれば、JSFさんしかいないわけです。
なので、JSFさんには、普天間代替として沖縄が政治的に利用不可となった場合の、軍事的オルタナティブを示して欲しいし、もしそれが導けない、というのであれば、せめて「軍事は政治の一要素であって、軍事的要請が政治的決定ではない」という当たり前のことを、改めて発言して欲しいなと思います。
JSFさんの良識に訴えます(トラックバック送付のためのダミーリンク)。
========= 追記 =========
JSFさんからコメントをいただきました。
> だったら私のところの読者を「馬鹿信者」呼ばわりするような真似は、そんな失礼な真似は絶対にすべきでは無かった。
ああ、これは失礼いたしました。
私としては別にJSFさんの読者全員を貶めたつもりはなくて、うちのコメントに馬鹿な言説を書き連ねた者限定で述べたものでした。
「信者がすなわち馬鹿」なのではなくて、「馬鹿な(一部の、うちに書き込んだ)信者」という意図でした。
JSFさんの読者には、Mukkeさんやsionsuzukazeさんを始めとして、Coolで冴えた方々がおられるのも、よく存じておりますので、「信者がすなわち馬鹿」という意図は毛頭ありませんでした。
ですが、そちらにトラックバックも送っており、そのタイトルにも「馬鹿信者」等と表現すると、確かにそちらの読者の方皆さんが不快な思いをなさるでしょうし、その点は配慮が足りませんでした。
申し訳ありません。
よって、タイトルも変更し、内容的にも、誤解を受けそうな「馬鹿信者」という表現は削除し、「JSFさんの意図を取り違えた馬鹿」という表現に改めさせていただきました。
ただ、「軍事的観点が政治の第一。暴動が起これば鎮圧すればよい。」とか、「テロが起きるような反抗がさえなければ、何を通してもよい。」とか、さらには「基地を作らせないのであれば、焦土にしてしまえ。」と言った言説は、どこをどう見たって馬鹿としか言いようがありません。
これは、JSFさんも、
> 勘違いしないように。私が、私のところの読者の発言を擁護するとかそういうのでは無くて
と書かれていたのが救いであるのですが、こういう連中はJSFさんの読者であるとかそういうところから切り離して、馬鹿としか表現しようがありません。
よって、「飽くまでこちらのコメントに書き込んだような連中に対して限定の指示代名詞として」、馬鹿という表現はそのままにしておきますので、ご了承ください。
重ねて書きますが、JSFさんの読者だから馬鹿なのではありません。馬鹿なことを書いているから馬鹿なのです。
また、JSFさんにこのような呼びかけをするのも、別にJSFさんの党派性を攻撃してのものではありません。
Twitterでzyesutaさんにも説明させてもらいましたが、
@zyesuta その辺のことは、記事の中に書いたと思うんですけどね。反日上等騒動の時は、当たり前の原理原則に固執して情勢に応じた柔軟さを語らなかった方が、極左だの在特会と同じだの叩かれたわけなので。私はその時にも左よりの人に柔軟になろうぜと語ったので、今回もそうしているだけ。
別に左派の人にも、言うべきときには言っておりますし、そしてその全ては喧嘩しようぜ、というためのものではなく、歩み寄ろうぜ、というためのものです。
今回もそうですが、そのためには原理原則でそれ以外の視点を見失っている人の目を解毒する必要があるのです。
反日上等騒動の際に、反日上等の権利はあるのだという原理原則に凝り固まった人達に、TPOに合わせたオルタナティブがあるのだと気付いてもらわないといけなかったのと同様に。
そのための協力を、呼びかけているだけなのですが。
とか書いている間に、sionsuzukazeさんから、恐ろしく冷静で、軍事だけでない多角的な視点からのオルタナティブが提示されました。
普天間の問題は普天間だけの問題ではない - 戯言 by 紫音
さすがsionsuzukazeさんというか、私もこんな迂遠なやり方じゃなくて、最初からこういうクールな問題提起ができてればよかったのですが(私の頭じゃ無理ですが...直感と勢いだけでピコピコハンマーで特攻するような感じの奴なので)。
これだけの多角的な視点から考察されていると、個人的にはかなり納得するのですが(だからといってそれが正解と短絡しているわけではありません)、しかし軍事的には、sionsuzukazeさん自身が書かれている通り彼も専門ではないそうなので、本当に可能な選択肢なのか判りません。
軍事が専門のJSFさんから見て、今回のsionsuzukazeさんのオルタナティブの可能性は、どのように思われますでしょうか?
是非ご意見が伺いたいです。
2010年01月10日
普天間基地移設が軍事的に見て県外移設はあり得ないとかの議論について
=== 注記 ===
最初に断りとして書いておきますと、本エントリは、普天間基地県外移転に関するどちらの論者をも、皮肉や揶揄したりする意図のものではありません。
私は県外移転すべきだと考えている立場ではありますが、JSF氏のブログを読むのは好きですし、いつも知らないことを勉強させてもらっておりありがたく思っています。
=== 注記終わり ===
普天間基地の県外移設がありえるかについて、軍事的観点からの議論が交わされています。
- なぜ普天間基地移設先は沖縄県内でなければならないのか -週刊オブイェクト-
- 中国側の予想「普天間基地移設先は沖縄西南部への前進配備となるだろう」 -週刊オブイェクト-
- 普天間基地県内移設に合理性は皆無 - モジモジ君の日記。みたいな。
- ヘリコプターの進化と沖縄海兵隊ヘリ部隊の合理性 -週刊オブイェクト-
- 佐賀空港は「有明海の干潟」のせいで海兵隊基地として不適当 -週刊オブイェクト-
- 中国の斬首戦略と台湾侵攻シナリオ -週刊オブイェクト-
- 独立戦争、敵味方双方の目的とは -週刊オブイェクト-
- 仮想敵国からの評価と援軍の重要性 -週刊オブイェクト-
- 普天間基地県内移設に合理性は皆無、その2 - モジモジ君の日記。みたいな。
正直いって、レベルが高すぎて、私ごときの知識だとどっちが正しいのかは全然判りません。
ただ、思うのは、なんで県外移設派の人は、「軍事的観点から見ても、県外移設が適当」だと証明したがるんですかね?(いやもちろん、議論なので正しいと信じるならば正しいと思う主張をすればいいわけではありますけど…)
県外移設は、歴史的・政治的問題だろうと思います。
なごなぐさんの日記の言葉を借りれば、
「地政学」も、「憲法9条」「改正」云々も、日本国のマジョリティがする沖縄に米軍基地を押し込めようとする必死な言葉遣いには、性根のところで腐った沖縄への差別意識がある。私も偉そうなことはいわない。沖縄の無学な貧困階級のおっさんだ。言葉遣いは汚いが、最後に一言だけ言わせてもらう。
「踏んでる足をどけろと言ってるんだ、殺されても替わりの足は踏ませない。」
以上、ここは、一歩も退かない。
という沖縄の叫びに対し、ヤマトがどのように応答するかという、純粋に政治的な問題ではないでしょうか。
そりゃ、政治的にも県外移設が求められており、軍事的にも不要、という二重の不要が証明できれば美しいですが、それは多くを求めすぎではないでしょうか?
純粋に軍事的には要請される選択肢でも、政治的制約のために実現できないことなど、世にいくらでもあると思います。
たとえば、台湾を守るというのが至上命令であるのならば、米軍や、あるいはそれこそ自衛隊を台湾に駐留させる選択肢もありうると思いますが、現在の政治的制約のも元では、さすがに誰もそういう主張はしないでしょう(私は軍事に今回の論戦参加者ほど詳しくないので、台湾防衛のために台湾に兵を置くことが軍事的に上策かどうかの判断はできませんが、しかしもし仮に上策であったとしても、現在の政治情勢の元ではその選択肢はとり得ないというのは、ほぼ共通認識ではないかと思うのですが、どうでしょうか)。
そのような、「軍事的要請はあったとしても、政治的にそれを選択させない制約」として、沖縄の基地問題を日本国民、そしてそのマジョリティである大和民族が受け止め定義できるかが、今回問われているのじゃないかと思います。
JSFさんは常に言われていることだと思いますが、純粋に軍事的見地からの判断しか主張されていません。
軍事は政治の一要素でしかないのですから、「軍事的要請がある=それ以外の選択肢は採り得ない(もしそう思う人がいたら、それこそ結論先にありきの議論)」という意味ではないですし、JSFさんも明晰な人ですから、「軍事要請的には沖縄以外の選択肢は考えにくい」のだとしても、それを証明したことを以って「よって、実際に施行される政策としても、沖縄以外の選択肢はあり得ない」とは考えていないでしょう(確かめてはいませんが)。
JSFさんが詳しい軍事の知識を元に、純軍事的には沖縄以外考えにくいのだ、という情報を与えてくれるのであれば、それは有用な一情報として聞き置いた上で、しかし歴史的・政治的考慮をすれば、やっぱり県外移転すべきだよね、という議論は、十分にできると思うのです。
また、議論の中で気になった点で、「中国の台湾侵攻に合理性はない」という主張に対し、「常に合理的な判断を国家が採るとは限らない、一昔前にもそういう『合理的には戦争など起こるはずがない』から起こった戦争もあった、あらゆる事態に軍事は備えなければならない」と答えるようなやり取りがありました(JSFさんがそう主張したと言うよりは、ブコメとかトラバとかでの野次馬的な応酬の中で)。
また、JSFさん記事中の台湾の方のコメントとそれに対するJSFさんの返答で、
812.(台湾の方)
あの、一台湾人としての見解を言わせていただきますね。
.........
ただ、アメリカが考えた「台湾有事」はもっと範囲が広いではないかと考えます。
中国による台湾侵攻だけではなく、台湾自体が日米に矛を向かわせた可能だって、ゼロではないです。尖閣諸島問題でも意図的に日本に挑発しています。あの「もしキリスト復活したら?」という命題に対して対策を考えたアメリカが、台湾が自ら中国の手先になる可能性に備えないわけがないでしょう。
813.(JSFさん)
素晴らしい知見をご披露頂きました事を感謝します。台湾人自身から「台湾が敵に回る事を考慮せよ」と仰られるとは、驚きと共に安全保障とはあらゆる可能性を考慮しなければならないことを痛感しました。このような事は、なかなか言えるものではありません。相手側の視点に立って考える事が出来る冷静な頭脳をお持ちで、見識の高さを伺えます。
というやり取りがありました。
このように、あらゆる可能性を考慮しなければいけないのであれば、それこそ、「沖縄が日本の敵に回る」可能性をも考慮しなければならないのではないかと思います。
「踏んでる足をどけろ」という沖縄の声に対して、永らく耳を傾けなかったばかりか、ようやく足をどけることを公約にした政党が政権を握ってすら、その約束を反故にされそうな感じ。
当事者の主観的立場から見れば、こんな舐められた話はありません。
それでなくとも、ほんの150年前までは別の独立国であった地域、ここまでされれば日本と天を共にする必然性等ないと考え、独立運動が沸き上がるような危険性もないとはいえないでしょう。
そうなれば、独立分離運動による政治不穏、その後の独立による政治的・軍事的空白と続けば、それこそ中国にこの地域へ干渉・併合する口実を与えてしまうことになります(沖縄が独立すれば中国が侵略にくる、と私が信じているわけではありませんし、JSFさんがそう主張しているわけでもありませんが、そういう論調はネット上で多々見られます)。
台湾海峡危機どころではありません。
そんな荒唐無稽な、日本のような民主(?)国家のくびきを抜けて、わざわざ中国のような独裁国家に蹂躙される危険性のある非合理的な選択を沖縄県民がとるはずはない...と思われるかもしれませんが、そもそもが人間は必ずしも合理的な選択をするわけではないから、あらゆる可能性を考える、というのが出発点であることを考えると、荒唐無稽でもなんでもないと思います。
「踏んでる足をどけろ」と主張する当事者の人達の視点から見れば、現時点で既に沖縄は日本やアメリカの軍事的植民地として映っています。
その「目の前の現実」を改めるためであれば、たとえ客観的に見れば「より非合理な結末」に陥る「可能性」があったとしても、「現実」と「可能性」という重みの差の前に、その選択をする可能性は十分にあり得るのではないでしょうか。
日本と沖縄が、完全に一枚岩という前提の元で純軍事的に見た場合に、普天間基地の県外移設は考えにくいという説は、十分に傾聴する価値はあるでしょう。
ですが、実際には、沖縄は政治的に微妙な立場をはらんだ地域である以上、純軍事的観点だけで政策を決めてしまうと、政治的に不安定になり、上記のようにかえって不安定要因を生む可能性もないとはいえません。
軍事的視点だけでなく、そういうあらゆる可能性も多角的に考えて、県外移設の可否は議論されるべきものだと思います。
さて、最後にJSFさんに質問(煽りでもなんでもなく、本気で質問)なのですが、政治的な制約がないという前提で、かつ純軍事面だけから考えた場合に、普天間基地の役割からいって、沖縄県外移設はあり得ない事は了解しました(というか、正確にはJSFさんが正しいのか反論者が正しいのか私ごときには判断が付かないので、留保していると言う意味ではありますが)。
が、もし純軍事的には県外移設は間違っていても、歴史的・政治的な制約として、台湾に兵を駐留できないのと同じようなレベルで、普天間基地の沖縄県内移設はできない、という定義が「もし」なされた場合に、軍事的観点から次善の選択肢を検討・献策するとすれば、どのようなものになるでしょうか?
とりあえず、沖縄県内と、奄美諸島は外した形で、どのような候補地が考えられるのか、教えていただければ幸いです。
2009年12月24日
GPS高度、ジオイド高、標高の関係
GPSでの高度の扱いについて知るために、ちょっとGPSトラッキングを行って実験をしてみました。
より大きな地図で ジオイド調査 を表示
▲ iPhoneのGPSトラッカーで取得したトラッキングデータ。 ▲
赤は行きの林試の森付近データ、青は帰りのかむろ坂付近データ。
この区間を歩いた際の、GPSの高度データも当然残っているので、それをグラフ化してみました。
同時に、こちらのサイトから取得できる、トラッキングされた経緯度での標高のデータを取得し、一緒にグラフ化してみました。


▲ 上が林試の森付近のGPS高度/標高プロファイル、下がかむろ坂付近のそれ。 ▲
両者間に30mくらいの差がコンスタントに存在。
すると、GPS高度と標高のデータの間に、30mくらいの差があるのが判ります。
これは何なのでしょう?
GPSの取得誤差?標高のデータ取得元に、『算出される標高には最大で50m程度の誤差が含まれる』とありますが、その範囲内の誤差、ということでしょうか。
そうではなく、この差を理解するには、まずGPSで出てくる高度が何を表す高度なのかを理解する必要、及び『ジオイド』と呼ばれる概念を理解する必要があります。
まず、GPSで算出される高度が何を表すか、です。
当然、地球というものは表面はでこぼこであり、球でも回転楕円体(円が回転した球ではなく、楕円が回転した立体)でもないのですが、一方で、GPS等で位置情報を正確に定義するためには、球でも回転楕円体でもない地球を、あえてある回転楕円体に近似して様々な計算を行う必要があります。
その近似対象として、GPSや正解測地系で採用されているのが、WGS84回転楕円体というモデルです。
GPSの高度値は、地上高でも海抜高でもなく、この『WGS84回転楕円体』からの、高さをデータとして出力しています。
では、GPS高度、回転楕円体からの高さから、標高を求めるのはどのようにすればいいのでしょうか。
ここで、ジオイドという値が出てきます。
ジオイドは、上記のリンク先の定義によると、『測地学では世界の海面の平均位置にもっとも近い「重力の等ポテンシャル面」を「ジオイド」と定め、これを地球の形状としています』というもので、ここからの高さが標高になりますよ、という水準面です。
その水準面が、ある経緯度で回転楕円体と比較して何m上にあるか、というのをデータ化したものが、『ジオイド高』データとなります。
つまり、その定義上、
- 標高 = GPS高度(回転楕円体高度) - ジオイド高
という形になるので、 その経緯度でのジオイド高を求めることができれば、GPSで得られた高度データから、標高データを計算できることになります。
では、経緯度毎のジオイド高の値をどうやって算出するかですが、それは以下でデータやツールが公開されています。
上記データを用いて、今回の実験データの位置での、ジオイド高の値、及びGPS高度-ジオイド高の値をグラフに加えると、以下のようになります。


▲ やはりiPhoneの精度の悪いGPSだけに、誤差は大きく出ているが、やっと実測GPS高度から得た ▲
データが、APIで得た標高の値とほぼ同じオーダに収まった。
心なしか昇り方向/下り方向のプロファイルも似ている気が。
やっと、GPS高度-ジオイド高で求めた標高と、APIから求めた標高の間で、オーダがほぼ一致しました。
やはり誤差が大きく、完全には一致してくれませんでしたが、まあiPhoneの高性能ともいえないGPSを使った結果ですから、このくらい一致すれば御の字でしょう。
という感じで、GPSで得られた高度に対し、それをサービスで使える標高に変換するために必要な「ジオイド高」概念の説明とその実験を行ってみました。
高度を利用するサービスを検討されている方がおられましたら、参考になれば幸いです。
国盗りはカジュアルゲー?
以下の記事で、国盗りが採り上げられていました。
ソーシャルアプリが1か月で100万人も集められた裏事情 - 明日のモバイルほろ酔い語り
カジュアルゲー(私はポチゲーと呼んでますが)が、パチスロやパチンコと同じゲーム性、という喝破は、私もここ数ヶ月同じ事をtwitter等で言っているので、全く同意です。
おそらくポチゲーにはまるユーザ層は、パチンコにはまるユーザ層と大きく重なるのだろうと考えています。
ですが、ケータイのゲーム=ポチゲーの方が流行る、というのは嘘だと思っていて、それはやはりユーザ層によって左右されるだろうと。
今、GREEやモバゲーやmixiがポチゲーで隆盛しているのは、たまたまそれらのサイトのユーザプロファイルが低年齢、低学歴、低収入であるためではないかと考えています。
翻ってコロプラや国盗りといった位置ゲーでは、ユーザプロファイルは圧倒的に高年齢、高学歴、高収入に集中しています。
このユーザ層の違いがある元で、同じゲーム性が流行る、参考になることはないと考えています。
ゲームとコミュニティをうまく融合させている方法論としては、GREEやモバゲーやmixiは参考になるとは思っていますが、その中で使われているゲーム性の傾向等は、全く参考にならないと考えています。
また、国盗りをポチゲー、カジュアルゲー扱いしているのも、若干違うところがあると考えています。
確かに、国盗りをしてもバックグラウンドに通底する世界観が感じられないところ(天下統一するのに、一度も戦国武将と戦わず、山賊や浪人とキャッキャウフフしてるだけとか)なんかは、ポチゲーと言われても仕方がないところがありますし、その辺は、私自身そういう方向性にしたくなかっただけに、不本意で情けない思いをしているところではあります。
が、しかし国盗りでゲームを進めるには、困難な実移動を伴わなければいけない、時刻表とにらめっこして最適な遠征ルートを計画しないといけない、対岸盗り等有利にゲームを進められる情報を集めなければならない、それらの実世界での困難こそが、通常ゲームでいうところのクエストに当たるのであり、それはサンシャイン牧場のような、気軽に毎日ポチポチやっていればゲームが進む、というところとは対極にあるわけなので、国盗りをポチゲー扱いするのは、少々違うと感じます。
国盗りのヘビープレーヤーの体験談を聞くと、
- 夜間、バスもなくなった中、次の国を盗るために歩いてでも少しでも進もうと山道を歩いていたら、車で通り掛った人に見つけられ自殺に行く人かと勘違いされた。
- 高知県の端のエリアまで盗ってから引き返そうと無理したら、ローカル線に乗り遅れて翌日の東京での仕事に間に合わなくなりかけ、地元の人に助けてもらって車で空港まで送ってもらった。
- 遠征先で大水害等にあい、鉄道も止まり道路も寸断され、1日以上足止めを喰らった
みたいなハードな話を当たり前のように聞きますが、そういった実体験こそが国盗りでのクエストだと考えると、決して国盗りはポチゲーではないと思います。
確かに、国盗り操作をした際に、あまり重いゲーム性がなくただ盗れてしまう、という意味では、ポチゲーっぽいですが、その国が盗れるにいたるまでに、ユーザはリアルで困難なクエストを成し遂げているわけです。
そのような困難なリアルクエストの果てに、いざ国盗りしたらゲーム中条件を満たしていないので国は盗れぬ、今すぐ東京に戻って条件を満たしてくるのじゃー、なんてのだとユーザさんぶち切れでしょう。
なので、「ケータイ国盗り」の国盗り操作があのように『ゲーム性として』ライトな感じなのは、それはそれでよいのだと個人的には考えます(『ストーリー性』的にライトなのは、先にも書いたとおり私も不満ですが)。
2009年12月05日
Googleマップの新機能、住所ドリルダウンの本当にすごいところ
Google マップで住所をもっと探しやすく - Google Japan Blog
Googleマップで、住所検索が便利になりました。
住所をドリルダウン検索で探すことができ、ドリルダウンにあわせて地図の表示範囲も変わっていきます。
逆に、地図を動かすと、その時の中心の住所が、ドリルダウン側に反映されます。
なかなか使い易いと評判のようです。
でも、位置情報システムをずっと見続けてみた者からすると、単純に住所ドリルダウンと地図が連動した、という以上のものが判りました。
そこまでやるか...というようなこだわりです。
それは、地図を動かした際の、住所ドリルダウン側へのフィードバック機能に隠されています。
私は、この機能について、冒頭では『地図を動かすと、その時の中心の住所が、ドリルダウン側に反映』と書きました。
この表現は間違っています。
正確には、『地図を動かすと、その時の表示範囲の住所が、ドリルダウン側に反映』されるのです。
要するにこういう事です。

▲ 品川付近、大縮尺表示した際、表示される住所ドリルダウンは町丁目レベル ▲
▲ 全く動いていないのに、縮尺を下げると表示される住所ドリルダウンは市区町村レベル ▲
これに気付いた時、驚きました。
中心点に一致する住所を、固定で最も詳しい大字まで検索する、というのならば、いわゆる逆ジオコーディングで、そんなに難しいことではありません。
ですが、表示されている範囲に対して、その『範囲』に対応する住所レベルを選び出す、というのはそれほど簡単ではありません。
簡単ではないというか、それほど『軽い』処理ではありません。
まさかそんな重そうな処理を、リッチにも前面に出してくるとは俄には信じがたかったので、『実際には「中心点住所検索」を行っているにもかかわらず、見た目は「範囲検索」を行っているようにみせかけているのではないか』と考えました。
それを実現する方法をいくつか思いついたので、その方法で実現しているのかどうか、確認してみました。
ズームレベル毎に、表示する住所レベルを固定している
まず最初に、ズームレベル毎に表示する住所レベルを固定しているのではないか、と疑いました。
つまり、ズームレベルXならば町丁目まで、ズームレベルYならば市区町村まで、というふうに決めているのではないか、と思ったのです。
ですが、これはすぐに否定されました。

▲ 日本最大の市区町村、大阪府よりも大きい高山市付近では ▲
市区町村レベルまでドリルダウンするズームレベルで...

▲ 日本最小の都道府県、大阪府付近を表示すると、ドリルダウンは都道府県レベルで止まる。 ▲
よって、ズームレベルによって住所のドリルダウンレベルを固定しているわけではない。
よって、この予想は否定されました。
各住所毎に、このズームレベルではどこまでの住所レベルを表示させる、というメタデータを準備している
次に、サービス全体で一律のズームレベル⇔住所レベル対応テーブルは持っていなくても、住所ごとにはもっているのではないか、と考えました。
つまり、同じズームレベルXでも、大阪府にマッチする領域では都道府県まで、岐阜県高山市にマッチする領域では地区町村まで、というメタデータテーブルがあるのではないかと考えました。
しかし、これもすぐ否定されます。

▲ このウィンドウサイズでこのズームレベルだと、ドリルダウンは都道府県レベルまでになりますが... ▲
▲ 同じ中心経緯度、同じズームレベルでウィンドウサイズが小さくなると、ドリルダウンは市区町村レベルまでに変わります。 ▲
上記のように、同じ中心経緯度で同じズームレベルの場合でも、ウィンドウサイズが異なればドリルダウンレベルが異なります。
よって、この仮説も否定されました。
以上のような実験結果から総合する限り、Googleの地図連動住所ドリルダウンは、姑息な?擬似手法を使っているのではなく、本当に表示範囲を受け取って、それにマッチする最適な住所レベルを検索する、ということをやっていそうです。
並みの会社ならば、そこまでこだわって開発工数や運用工数増やすよりは、どうせ誰も気付かないのだし擬似的なやり方でええやん、となってしまいそうなところですが、さすがGoogle。
一つ前の境界未定地対応記事で書いたような、特殊な個別事例への人力対応みたいなことにはとことん弱いですが、技術でなんとなかる事についてはとことん手を抜かないのはすごいと感じました。
地図サービスによって行政界の描画が違う、という話
地図によって行政界が違う、という話。
葛飾区水元公園周辺の行政界って、どうなってるの?? - エドルネ日記
ぶっちゃけ、行政界未確定域とか、所属未確定地とかのこだわり要素を見るなら、一番信頼できるのは電子国土やYahoo地図、その次がMapion、Google Mapsは一番信頼できないといっていいです。
電子国土はやっぱり日本の一番基本のデータを使っているし、Yahoo(元アルプス)地図は紙地図から出てきただけあって、安易にデータ化するよりも、『正しい地図』を『美しく』見せるために、地図職人がこだわりの地図を『画像として』作ってます。
Mapionは元Yahoo地図を使っていただけあって、そういうところへのこだわりの文化が引き継がれています、が、いかんせん『自分でベース地図データを作ってない』だけあって、それに左右されてしまいます。
最近、Mapionは『都市部等での細密図の充実』と『地図デザインのオリジナルブランド化』を狙って、画像でしかデータがもらえないYahoo地図を止め、元データで供給してくれるZENRINの地図データを使ってますが、ZENRINは住宅地図から出てきただけあって、こだわりポイントがYahoo等とは違っており、海岸線の描画とかですら適当だったりもします。
そういうところからデータを買って作っているので、デフォルトで描画すればテキトー地図になるわけですが、こだわり文化があるので、こだわらないといけないと気付いたところは、特別にケアして直したりしてます。
が、こだわりに漏れがあるとテキトーなまま出てしまうわけなので、「水元公園」の件もそのような一環かと思います。
話題に挙がったので、もしかしたら数ヶ月中に直るかも(笑)。
Googleはご存知の通り、自動化・共通化が好きで人力の特別処理とかを好む社風ではありませんから、そういったあたりにはこだわらない(その代わり、自動化で一律に品質が改善するようなところへのこだわりと技術はすごいですが)。
使っているデータはMapionと同じなわけですが、テキトーなデータを買えば、テキトーなまま描画する。
なので、Yahooと違い、行政界なんかは絶対に信用できない。
MapFanはよく判りませんが、元がカーナビ用の道路地図出自ですから、やはりYahooほどのこだわりはないのでしょう。
具体例として、おそらく日本で一番有名な境界未確定地として有名な、富士山頂。

▲ Yahooでの富士山頂。 ▲
山頂少し西から、小富士の少し東まで、山梨/静岡県境が途切れているのが判ります。
ところで私、この地図でまじまじと見るまで、小富士って宝永火口の事だと思ってました...。

▲ Googleでの富士山頂。 ▲
境界未画定域など全くわかりません。

▲ Mapionでの富士山頂。 ▲
おお、境界未確定域が表現されている!さすが!と思いきや...。

▲ ちょっと小縮尺にずらせば未確定域がわからなくなる。 ▲
この辺が、個別ケアで対処しているが故のヌケとかだろうか。
===== 追記 =====
記事アップ後あらためて各社見比べてみると、境界未確定とはいえ便宜的に色分けられている領域で、Yahooでは小富士は山梨県側に入っているのに、Mapion、Googleでは静岡県側に入っていたりして面白いですね。
さすが未確定域、という感じでしょうか。
また、確定域が始まる地点も、Yahooだと小富士より海抜250mは低いところから始まっているのに、Mapionだと小富士とほぼ同じところから始まってます。
変に思ったので、電子国土と比較してみると、

▲ 電子国土での小富士周辺 ▲
どうも、Yahooの方が正しそうですね。
というか、ZENRINデータの小富士の位置、明らかに少し北東にある三角点の位置と間違えてるだろ...。
===== 追記終了 =====
別の例。
これまた有名な境界未確定域、十和田湖面上ですが、

▲ Yahoo地図での十和田湖。 ▲
あれ?境界線が書かれているぞ?何でだ?
境界線が定まっていないはずなのに、境界線が書かれています。
もしかすると、こちらに『十和田湖で137年経て県境確定』という記事があって、この記事ではまだ「見込み」なのですが、それが既に確定したのかもしれません。
試しに電子国土で調べてみると、

▲ やはり境界確定している。 ▲
Yahooはこの辺ちゃんとこだわるという実績を積んできてるから、信用できる。
電子国土でも既に境界が描かれているので、やはり境界確定したと考えてよさそうです。
確定したのを知らずにまだ古いこだわりのままなのかと思ったが、ちょっと変です。
なぜなら、十和田湖面の行政界不確定域は、十和田湖少し北の御鼻部山山頂から十和田湖面までの不確定域だったのですが、この地図だと山頂から湖面までは境界が引かれているからです。
境界未確定域に個別ケアしてこだわろうとして、こだわる範囲を間違えたのでしょうか。
ためしに、同じデータを使っているGoogleの地図を見てみると、

▲ Googleの十和田湖、Mapionと同じ描画っぽい。 ▲
山頂から湖面までのみ境界を描き、湖面には境界がないのは、ZENRINのデータ自身の問題だったのか?
MapionとGoogleの描画はほぼ同じ状態なので、この変な境界はZENRINのデータ自体の問題だったようです。
Googleの地図を見る限り、他の内水面上(琵琶湖、霞ヶ浦等)には行政界が描画されているので、内水面上は行政界データを含めない、というルールがあるわけでもなさそうですし、なぜZENRINのデータが十和田湖上の行政界を含めなかったのかは謎です。
後もう一つよく判らない問題として、Mapionは、一つ小縮尺にすると、御鼻部山山頂からの行政界がない、正しい(というよりは、かつては正しかった)境界を示すんですよね。

▲ Mapionの十和田湖小縮尺。大縮尺では変だった、御鼻部山山頂から十和田湖面までの境界がない。 ▲
富士山の時と違い、小縮尺の方が正しい(正確には、かつて正しかった)わけで、この辺、Mapionのポリシーがイマイチ判りません。
個別ケア故の、対応の乱れなのでしょうか。
最後に、Yahooの地図は信用できる!と絶賛した記事を書いてきましたが、ちょっと変なところを見つけたので採り上げます。
香川県と岡山県の県境の島、井島(香川側表記、岡山側では石島)でも、一部境界未確定地域があります。
Yahoo地図では、小縮尺地図では未確定状態が読み取れるのですが、大縮尺地図で境界確定状態になってしまっています。

▲ Yahoo地図での井島。西部ヘラガ崎付近が境界未確定。 ▲

▲ 電子国土では、未確定状態のまま。 ▲
これも、十和田湖と同様にもしかしたら既に確定していて、その状況をいち早くYahooがキャッチして、国土地理院より早く修正を加えた、という可能性も捨て切れません。
(ベースデータである電子国土に、『変更があった』という事実は信用できますが、『変更がない』という事実は、まだ反映されていないだけかもしれないので信用できませんから。それに、ここにこだわる!というところへの対応は、お役所より民間の方が早いでしょうし。)
しかしいずれにしろ、大縮尺と小縮尺という自社データ間に矛盾があるのは、これまでのYahoo地図の品質の高さからすると名折れだと思いますので、修正して欲しいものです。
===== 追記 =====
エドルネさんの元記事見てみると、水元公園で河川の水面に行政界が描かれているというのはGoogle、Mapionとも同じなのですが、行政界の形状が微妙に違うという指摘がありました。
GoogleもMapionもベースはZENRINのデータを使っているので、そんなことはないはずなのですが、しかし事実として違うようです。
この辺私も担当者じゃないのでよく判らないのですが、Mapionはオリジナルのバリューを出すために、ZENRINデータに頼りきって一辺倒、というのではなく、いろんなところからいろんなデータを持ってきては改善したりしていますので、その辺でここでは違うデータを使ったりしているのかもしれません。
いずれにせよ、境界未確定域に境界線を引いてしまっている事実は変わらないわけですが...。
2009年11月16日
PostGIS:球面座標系に対応するらしい&その他雑話題
PostGISが1.5から、球面座標系に対応するみたいです。
- PostGIS does Geography - Postgres OnLine Journal
- OpenGeo : Geodetic Types
- Paul Ramsey: PostGIS gets Spherical (Directors Cut)
これまでのPostGISでのGeometryデータ型では、平面座標系であったため、経度・緯度でデータを保存すると距離演算の関数とかもその座標系上での三平方の定理演算になってしまい、球面上の2点として結果をmで返してくれるようなことはありませんでした。
distance_sphere、distance_spheroidのような関数もありましたが、インデックスを効かせた演算はできませんでしたし、これまでのPostGISで球面上距離での検索等を行おうとすると、地図投影法等の知識を駆使して、mで評価できる平面地図座標系に投影変換した結果に関数インデックスを張っておく、といった方法を採る必要がありました。
が、今回できるGeography型というのを使うと、経緯度でデータを収めても、距離演算関数を通すとちゃんと地球を球とみなし、mでの演算結果を返してくれるようです。
これで、GISに詳しくない人でも、直感的に簡単に、位置情報データをSQLで扱うことができるようになります。
単に球面座標系を扱えるようになったというだけではなく、インデックスの検索速度等も向上しているようです(もっとも、GeometryよりGeographyの方が検索処理が容易だからというわけではなくて、そもそもインデックスの作成アルゴリズムをより速いものに変えたのですが、それがまだGeography型にしか適用されていないことによるものらしいです。PostGIS 2.0からはGeometry型にも新インデックス方式が適用されるらしいので、そうなるとやっぱりGeometry型の方が速いのだろうと想像します)。
ただ、今回の対応は飽くまで「球面座標系」での対応です。
地球は実際には、極半径より赤道半径の方が長い「回転楕円体」なので、厳密には誤差が生じ、完全な対応とはいえません。
が、厳密な用途でない、いわば「GIS」ではない「Neogeography」的な用途であれば、十分実用に耐えると思われます。
私も上記の記事を読んだだけでまだ試していないのですが、また折をみて試してみようと思います。
また別の話題として、PostGISにはいろいろなジオメトリ演算の関数等もあるのですが、最近結構使いでのありそうな関数の存在を知りました。
ST_Simplifyという関数ですが、これは複雑なジオメトリの形状を間引いて、簡潔な形を算出してくれます。
これ、FOSS4Gでも発表されたと思いますが、Mapionの地図での、道路形状簡略化にも使われているそうです。

▲ Mapion地図での、日光いろは坂大縮尺。 ▲
この縮尺だと、道路形状そのまま描画しても潰れませんが...。

▲ Mapion地図での、日光いろは坂小縮尺。 ▲
道路形状そのまま描画すれば潰れるはずですが、
ST_Simplifyで道路形状を単純化して潰れないようにしています。
うまく使えば、上記のような芸当ができます。
小縮尺地図の描画以外にも、いろいろ使いでがありそうです。
さらに別の話題。
最近、TwitterでPostGISの話題をしたのですが、
- KMLって座標系の指定出来ないのかな?
shige1973
2009-11-12 22:07:09 - [B!] 月の杜工房 - PostGISからKML出力 http://bit.ly/QPXlj
kokogiko
2009-11-12 22:12:01 -
@kokogiko ありがとうございます。PostGIS使えば楽なのか!
shige1973
2009-11-12 22:33:38 -
@shige1973 特定図法のラスタデータを重畳したいとかでなければ、ベクタデータならPostGIS経由が一番早いよ。テーブルに突っ込まなくても、オンザフライでも変換できるし。
kokogiko
2009-11-13 11:20:23 - 正直、ジオメトリ演算するのにGEOSを頑張ってLightweight Languageにバインディングとか頑張るぐらいなら、PostGISをサーバに突っ込んでおいてSQL文一発で演算できるようにする方がはるかに楽。負荷はともかく。
kokogiko
2009-11-13 11:23:54 - ラスターまで考えたら、MapServerの力借りないと無理だと思う。
kokogiko
2009-11-13 11:24:32 -
@kokogiko postGIS結構な処理もこなしてくれますよね。以前ブログに書かれていた、メルカトル図法に変換してindex効かす方法で距離計算しているのですが、今の所問題なく稼動してます。
nonomura
2009-11-13 12:02:09 -
@kokogiko 作業ツールって発想イイですね
shige1973
2009-11-13 12:18:31
上記で話題にしたように、PostGISを空間DBではなく、ツールとして使うという発想、結構ありだと思っています。
PostGISは結構いろいろな座標系変換やジオメトリ演算の機能を持っていて、それはproj.4やGEOSといったライブラリの機能に因っているわけなのですが、この手のライブラリを各種言語から直接扱おうと思うと、かなり、いや相当大変です(proj.4はともかく、特にGEOSはバインディングの難しさもライブラリのインタフェースの訳判らなさも、泣きそうになる)。
ですがPostGISは、そのproj.4やGEOSの豊富な機能を、SQLというすごく判りやすいインタフェースで提供してくれ、かつDB接続なのでほとんどの言語でまず当たり前に接続できる。
なので、PostGISを空間DBではなく、proj.4やGEOSの機能を汎言語的で平易なインタフェースで使うツールとして捉え、テーブルも作らずオンザフライで位置情報演算させるためだけにアプリケーションサーバにインストールしておく、という考えはアリだと思うのです。
もちろん、直接各ライブラリを叩くよりは(叩ける環境を作れたとして、ですが)オーバーヘッドが生じるのは当然ですが、そもそもジオメトリ演算とかってそんなに頻繁に行われる処理だっけ、また同期的に処理できるほど軽い処理だっけ、というあたりから考えると、非同期でバックグラウンド処理としての用途ならば、PostGISをツールとして使うのは、考えうる構成ではないかと思います。
以上、とりとめもなくPostGIS繋がりで3題書きましたが、どれかでも参考になれば幸いです。
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