2006年12月04日
携帯電話位置ベース広告を成り立たせるためには
過去におそらく世界初のこんな実験をやったこともある身として、「今・ココ」のコンテクストを取得できる携帯電話に対する、位置情報ベースの広告には非常に注目しているし、将来もあると信じているのだけれど。
でも、それを信じる身にはショッキングな情報を、最近聞いた。
ちょっとネガティブな情報になるので具体的な社名は伏せるが、その位置情報ベースでの携帯Webへの広告配信サービスを、実用化したベンチャーがある。
俺は当然注目もしてたし、その創業者の人のことは尊敬して著書も買ったりしてたので、当然(まだまだこれから成長中の分野なので限度はあるにせよ)位置情報ベース広告運用のノウハウもその会社の中に溜まり、また位置情報ベースの広告をどのように集めるか、というマーケティングサイドのノウハウも、どんどんその会社の中に溜まっていっているのだと信じていた。
だが、最近業界の中の人に伺ったところだと、システムは優秀なものができて位置情報広告ビジネスをする準備はすっかり整っているにもかかわらず、ほとんど広告を出稿してくれるクライアントが集まらず、の開店休業状態で、どうしましょうか、という状況らしい。
位置ベース広告の将来を信じる者として、この話にはかなりショックを受けた。
でも、ただショックを受けていてもしょうがないので、俺なりに位置ベース広告を成長させるにはどうすべきかを、ちょっと考えてみたい。
まず、第1に思ったのは、ローカル事業者の広告に強い業者と組むべきじゃないかということ。
「今・ココ」のコンテクストを利用できる位置ベース広告は、広告配信範囲を限定することで効果的な広告を安価に配信できることに魅力があるのであり、今までの非位置ベース広告だととてもネット広告のクライアントにはなれなかったような、地域密着の中小事業者、特に飲食・サービス関連の事業者にとって魅力ある広告システムになる。
逆に、これまでのネット広告に出稿してきたような大事業者なんかにとっては、別に位置や時間なんかに関係なくどこでも名が知られさえすればいいのであり、位置ベース広告なんて別に興味をそそられるものではないと思われる。
しかし、飽くまで聞いた話の範囲であるが、これまで件の会社が広告の集稿のために組んできている広告代理店としては、雑誌やテレビなんかの広告配信でも知られる某大手代理店なんかと組んで、クライアントを探しているらしい。
それでは、うまくいかないのではないか。
たとえば地域密着のホット・ペッパーのような情報誌も作っていて、またWeb戦略としても「ドコイク?」や「スゴイ地図」等、ローカル情報検索に明確な戦略を持って取り組んでいるリクルート社とか、そういうところと組むべきではないのだろうか。
先日のPLACE+ワークショップでリクルート社のプレゼンを聞いて目ウロコだったんだけど、リクルート社のローカル検索開発やたたみラボでのWebサービス開発は、明確な全体戦略の元に開発が進められている。
リクルート社の業務は、クライアントの事業者とユーザを自社のメディアでマッチングさせることで成り立っているわけだけれども、単なるマッチングでは、最近はネットでのGoogle検索等を通じて事業者とユーザが直接マッチングされるような事が増えており、単なるメディアサービスだけでは今後生き残れないだろうと。
そこで、現在のところまだGoogle等のネット業者が弱い、ローカルベースの検索に目をつけ、その方面でのプレゼンスを高める戦略を採っているらしい。
またたたみラボなんかも、俺なんかのぬるい認識だと、最近のトンガったネット系企業の多くが流行りだからとラボを設置しているその流れで、リクルートという大会社にできたところが謎だけどその流行りにのってできただけだろう、とか考えていたんだけど、そうではなく、事業者とユーザをマッチングさせる場を提供するのに、自社サイトだけでは限界がある、そこで情報を自由に使えるようにすることで、勝手にユーザへのマッチング機会の場を広げてもらおう、という役割を担っているらしい。
こんなふうに、明確なローカル戦略・ネット戦略を持った代理店と組んで、位置ベース広告の集稿をすべきではないだろうか。
もう1つ思うのは、位置ベース広告は広告が集まらないとか云々いう前に、そもそも広告配信のベースとなる位置情報を活かしたコンテンツそのものが育っていないのではないかと思うのだ。
まず、そちらを育てるための方策を採るべきではないかと思う。
俺は、位置情報を活かしたコンテンツが育たないのは、位置情報を活かしたコンテンツのアイデアがなかなか出ない、という以上に、
- キャリア毎に異なる位置情報の取得方法や、位置情報の精度差のために、キャリア横断の位置情報利用コンテンツが作りにくい
- ユーザに判りやすい位置情報コンテンツには必須ともいえる地図インタフェースを、携帯で自由に利用することができない
という2つの大きな障壁が、勝手位置情報コンテンツ等の登場を妨げているのではないかと考えている。
またこの2つの障壁は、完全に独立した問題というものでもなく、取得できる位置精度がキャリア毎に異なるのならば、それを隠蔽するにはユーザに精度誤差に応じた範囲の地図を提供し、詳細位置はユーザに手動でセットしてもらうといった対策が考え得るという点で、連動している問題でもある。
これらの障壁を取り除くために、ちょうどPC版WebでGoogle Maps APIが「Javascriptのブラウザ毎の差異障壁」と「高価な地図ライセンスの障壁」を取り除いて、PC版位置情報コンテンツの隆盛が興ったように、キャリア毎の位置取得方法や位置精度の差異を隠蔽するWeb-APIや、コンテンツ内で自由に使える地図インタフェースを提供し、携帯位置情報コンテンツ作成の敷居を下げて携帯位置情報コンテンツを育てなければ、広告配信もクソもないと思うのだ。
といっても、件の位置ベース広告配信ベンチャーは地図コンテンツ等は持っていないので、地図屋を説得し提携することで、そういった手を打っていかなければいけないのではないかと思う。
業界のいろんな人とGoogle Mapsに関する意見を交わしたりしたけど、手放しで「位置情報コンテンツ作成の自由をコンテンツ作成者に開放した」と評価する人は少なく、「あれは将来位置情報ベースの広告等を配信するための、Googleによる開発者の囲い込みだ」と考えている人が大半だ。
実際そうだろう。ビジネス的に考えれば当たり前の話。
でもそう思うのなら、Googleがいまだ参入していない、参入しづらい、また位置というコンテクストをより活かしやすい携帯の業界で、Google Maps同様の開発者を囲い込む地位を得るために、地図の提供など行ってやればいいじゃないかと思う。
でも、そう煽ると、「ビジネス的に成功するかどうか判らないし...」と二の足を踏むんだよな、誰もが。
位置情報コンテクストに恵まれた環境ですら位置情報広告に未来を感じられないなら、その儲かるかどうかも判らない位置広告を囲い込むために地図の利用を開放したGoogle Mapsの功績を、素直に称えればええやん、と思う。
Googleがいかに大企業とはいえ、全世界相手に儲かるかどうかも判らない地図配信の開放をやるのは、多大なコストがかかっているはずだ。
ましてや事はローカル情報配信のためのプラットフォームだけに、全世界を整備する暗黙的義務があることは足枷にはなってもアドバンテージにはならないはず。
にも関わらずGoogleが地図を開放することを「将来ローカル広告で儲けるための囲い込み」と評するならば、それはすなわち位置情報広告に未来を感じてるということなのだから、まだ踏み荒らされていない処女地の携帯Webの世界で同等の地位を得るべく、自分も飛び込んでみればいいのにと思う。
確かに今は、携帯端末側の機能の縛りもあって、単に地図画像をHTTPで配信するだけでは、将来広告を載せるプラットフォームにもならないし出すだけ損だ、という意見もある。
でも、まずは他者に先駆ける事で、開発者の関心を買って囲い込むことが大事なんじゃないかと思う。
その後でゆっくりと、FLASH対応の端末にはインタラクティブなFLASH地図を配信して、「機能が進化した!」等と思わせつつ、実は位置ベース広告を載せるための下地を整えるとか、ゆっくり準備すればいいじゃないかと思う。
また、飽くまで思考実験レベルで、本当にできるかは詳細検討しないと判らないけど、HTTPベースだけでも、コンテンツ開発者に自由に地図を使わせつつ、地図提供者側が位置ベース広告を載せたいと思えばそういう制御も出来る、そういう方法もあると思っている。
とりあえず「一歩踏み出して」みて、それでもって携帯位置情報コンテンツと携帯位置ベース広告の隆盛に一役買ってやるという、そういう「カッコイイ」地図会社やウェブマップ業者は、どこかに現れないものだろうか...。
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