2007年06月03日
測地系の問題について今一度再考
最近会社内で話題になったのを機に、測地系について再考。
測地系の違いと言うのは、基本的に基準とする楕円体の違いと原点の違いから発生します。
明治以降元々日本で使われていた旧日本測地系(Tokyo Datum)というのは、準拠楕円体として「Bessel」というのを用いています。
それに対し、最近使われるようになった、世界的な測地系にほぼ一致させた新日本測地系(JGD2000)というのは、準拠楕円体として「GRS80」というのを用いています。
また、旧日本測地系では、地球と準拠楕円体が測地原点である東京麻布で接するような位置関係でしたが、新日本測地系では地球中心と楕円体中心が一致するような位置関係のため、座標系としての原点もずれており、変換にはそのためのシフトパラメータが必要となります。
過去色々遊んだ経験上では、新旧の日本測地系で西北-東南方向に400m前後位置がずれる云々の話は、楕円体よりもこの原点ズレが誤差原因の大半を占めています。
また、GPS等で用いられ事実上の世界測地系となっているWGS84座標系は、実は準拠楕円体としてWGS84というのを使っており、新日本測地系とも少し違うのですが、GRS80とWGS84の違いは短半径が0.1mm違うだけでかつ原点は一致しているため、事実上同一とみなして間違いはありません。
実は、座標系としての、旧日本測地系と新日本測地系・世界測地系との間の差は、以上でしかありません。
ですから、本来は旧日本測地系と世界測地系の間は、計算だけで変換可能なはずなのです。
ですが、多少地理をかじった人なら、旧日本測地系と世界測地系の間の変換は、計算だけでは変換できず、地域ごとの変換テーブルを用いたリニア補間をしなければならない、と言う話を聞いたことがあるのではないかと思います。
これは、本来の座標系としての測地系の差の他に、その座標系の元で行われた「測量成果」の問題が絡んできます。
測量は、政府が公共事業として行った測量成果、その結果として設置された測量基準点を元に、三角測量等で測量されてそれぞれの場所の経緯度が特定されます。
当然、測量基準点の経緯度は政府が定め認定したものですから、日本中の各地点の経緯度も、その基準点をベースにしたものが「正」として認定されます。
ですが、旧日本測地系の元で行われた測量基準点の設置では、当時の測量技術の精度の問題等もあり、本当の旧日本測地系での経緯度座標値と認定された経緯度座標値の間に、ズレが生じました。
当然、精度誤差によるズレなので、計算では吸収できない非線形なズレです。
これは、周りの基準点との三角測量で位置を確認できず、天文測量等に頼るしかなかった岬や離島等では、特に大きな誤差となりました。
つまり、旧日本測地系の元で公式に認定された測地成果としての経緯度は、旧日本測地系の座標系の元でも「ズレて」おり、正しい値ではなかったのです。
旧日本測地系の正しい直交座標上に、測地成果での座標に従った地図のプロットを行うと、地図が正しい位置関係には表示されなかったということです。
にも関わらず、公式な経緯度座標としては測地成果の値が採用されているため、それを新日本測地系・世界測地系に変換する際には、計算ではなく地域毎の変換テーブルを利用したリニア補間でしか変換できない、ということなのです。
さて、ここで我々が日常用途で旧日本測地系⇒新日本・世界測地系の変換を行う場合を考えてみます。
考えられるのは、いまでも多くの日本の地図サイトが旧日本測地系を座標指定に使っていますが、その地図の上で得た経緯度を、新日本・世界測地系に変換するような場合です。
日本の地図サイトが、旧日本測地系での地図のプロットをどのように行っているのかは、実は正直よく判りません。
役所から出た公共測量成果の値をそのまま利用してプロットしているのか、それともそれに従えば地図が実際とは異なる歪んだ位置に表示されるのは判っているので、独自に位置の補正を行っているのか。
もしかしたら地図会社によっても異なるのかもしれません。
しかし、そのどちらかによって、旧日本測地系⇒新日本・世界測地系の変換を行う際の計算方法も異なってきます。
前者の場合は、測地成果の座標ズレをそのままひきずっているので、正確な変換をするには地域毎の変換テーブルを利用したリニア補間をしなければなりません。
ですが後者の場合、地図の位置はすでに正しい位置に補正されており、座標系が異なるだけ、という問題になるので、正しい変換をしたいならば楕円体と原点ズレを補正するための計算だけで行われねばならず、地域毎の変換テーブルを利用したリニア補間等を用いると、正確に計算しているつもりが余計に間違った変換結果を出す事になってしまいます。
旧日本測地系⇒新日本・世界測地系の変換というと、計算だけのものは簡易変換、地域毎の変換テーブルを利用したリニア補間が精密変換、と思い込みがちですが、「旧日本測地系」上での元のデータが持つ意味を正しく知らなければ、精密変換をしたつもりがかえって誤差を生む変換をする事になります。
個人が素人勉強で覚えた話なので、専門家からみれば細かい間違いがあるかもしれませんので、是非ツッコミよろしくお願いいたします。
初めまして。様々な位置情報の話、しばしば拝見しております。
測地系以前の問題として、市町村界は影響を及ぼしてはいないのでしょうか。市町村界の中には、互いに譲れず曖昧になっている場所があるそうです。そういった曖昧な点を原点に位置を計算しているようなものがあった場合、無用な狂いが発生する可能性があるように思います。
また、海面での位置情報(とくに漁業関係)については、一旦陸地に原点を求め、そこから沖合○○m、という形で点を求めることが多く、陸地の小さな誤差が大きく出てきてしまう可能性があるように思います。
今はGoogle Maps等で海面の位置情報はほとんど見られませんが、将来、例えば遊漁船の釣りポイントや禁漁区域、プレジャーボートの安全航行等に必要な情報をネットで検索する時代が来るのでは?などと思っています。今はちょっとした船ならGPSを積んでいるので、船用GPSにネットで取得した位置情報(例えばgeo語彙を用いたRDF/XMLなど)を入れておけば、定置網の近くに寄ると警報を発してくれるとか、そんな時代も来るのでは、と夢想しています。
そんなわけで、ちょっと話題からずれているかもしれませんが、海面の扱いはどうなのだろう?と感じてコメントさせていただきました。
Posted by: ヒロ at 2007年06月03日 21:58![[ここギコ!]](http://kokogiko.net/logo.png)



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