2008年10月18日

右翼はアイヌや沖縄を包摂する論理を構築すべきではないのか

Posted by nene2001 at 13:55 / Tag(Edit): okinawa ainu society / 0 Comments: Post / View / 5 TrackBack / Google Maps このエントリーを含むはてなブックマーク

2008/11/24追記:

本記事に準ずる「大和民族」の用法について、はてなのid:munyuu氏より異議をいただいております
こちらの記事で私の見解を示した上で、代替案の提示をmunyuu氏にお願いしておりますが、いまだ代案をいただけておりません。
もし彼に代わってどなたか代案をいただけるようでしたら、提示いただければ幸いです。

なんか馬鹿な前提の元に馬鹿な思考を書き連ねてるなあとは思うけど、世の中馬鹿な前提を当然のごとく再前提において物を言う人も多いので、それに付き合ってもうちょっと考えてみたいと思います。

前のエントリでこんなこと書いたけど、

個人的な印象なんだけど、この社会に蔓延するこの手の問題への無関心・無神経って、社会議論の両翼のうちの右の方が、アイヌとか沖縄の問題を思想の上で理論的に組み入れようとせずガン無視決め込んできたあたりに問題があるんじゃないの?という気がする。

いや、別に右翼思想がアイヌや沖縄を思想上に組み込んで一視同仁の論理を組み上げれば、アイヌや沖縄の人が喜ぶとか、そういう意図で書いたわけではないのだけれど、ただ同じ家に入れ、同じ家の者として振舞えと主張する側が、同じ家に入るべき明確な論理を全く示さないのは、誠意に欠ける態度だなと思うわけです。
結果、左の側だけが取り上げるので、やれアイヌだの沖縄だのいうと左の側が政治的に利用してるとかのステレオタイプがあるけど、実態は全く逆で、右の方が本来考えないといけないことをうっちゃってきたからこそ、今日の状況があるんじゃないかと思うのです。

例えば、天皇制について考える時、やれ万世一系だとか、日本人は易姓革命思想を選ばなかったとか、天皇は日本の祭祀を司ってきたとか、日本の精神の中心だとか、色々理屈が出てくるわけです。
でも、仮に、もし仮に、その前提を公理として全部受け入れたとしても、それらは全部、「大和民族」の理屈であって、「日本国」の理屈ではありません。
アイヌにしろ沖縄にしろ、ついこの間まで別の祭祀空間に生き、沖縄なんか万世一系どころか易姓革命起こしまくっている訳ですが、それがなんで大和民族の都合を国の公理として受け入れなければいけないのか、そのことに関する明確な説明を寡聞にして聞いたことがありません。
天皇制に限らず様々な問題について、「大和民族」に対しては「歴史だ」「伝統だ」で説明しようとする彼らが、アイヌや沖縄に対しては、「歴史」や「伝統」を踏まえずに、「日本国民なのだから」「反日だ」「アカだ」以上の説明を聞いたことがありません。

#天皇制を取り上げたのは、矛盾の構図が判りやすいからで、ことさら「天皇制打倒」とかそういう意図ではありません。念のため。

繰り返しますが、右翼の論者は「大和民族」の「歴史」と「伝統」をふりかざして、制度や慣習に従うべき理由を言い募りますが、一方で、居住してきた北海道や沖縄が神話上での大八嶋に含まれるわけでもなく、長らく祭祀・信仰の空間も別にし、異なる天を仰いできたアイヌや沖縄が、無条件に自分たちの「歴史」と「伝統」を捨てて大和民族の「歴史」と「伝統」にあわせなければならないのか、そのことに関する明確な説明を聞いたことがありません。
沖縄に関して言えば「日琉同祖論」あたりに多少なりとも努力の一端があるのかな、と思ってちょっと調べてみましたが、それによると源為朝が沖縄に流れ着いて舜天王統の祖・舜天になったという言い伝えが、日琉同祖論の根拠ということのようなのですが。
別に舜天王統は沖縄の最初の王統ではない(そのまえに天孫氏王統がある。天孫氏王統は伝説だ、というなら舜天王統も伝説の域を出ない。)から沖縄の人々の祖というわけではない。
またそれでもその後、舜天王統が万世一系で近代まで続いてきたというのであれば、日琉同祖に結びつくのも判らないではないが、実際には舜天王統はたったの3代で英祖王統に禅譲し、易姓革命が起きている。
さらに言えば、源為朝は確かに天皇の子孫ではあるが、既に臣籍降下した身。
貴族とはいえたかだか「大和の一臣民」が、過去に一度沖縄で「短命王朝を樹立」したという「伝説」がある、それだけの根拠では、近代になって突如、大和民族と同じ「万世一系の王統」を奉じなければならない説明にはならないと思うのです。

#考え得るツッコミとして、沖縄人だって大和民族だ、というのが来そうですが、そりゃ民族の定義にもよるものであって、よく判らないけど仮に、例えば言語学的にみれば沖縄の言葉は一方言に過ぎない、だから沖縄も大和民族だ、的な議論もあるのかもしれない(何度も書くけど、仮に、ですよ)。
でも、ここで問題になるのはそういう次元の「民族」でなく、政治と祭祀の話であるので、たとえ「何チャラ学問」では同じ民族の範疇に入るという結果であっても、政治・祭祀の面では、いわゆる「狭義の大和民族」では、政治と祭祀の連続性が保たれ、それが今日まで制度が残る最大の根拠になっているのだろうけど、沖縄ではずっと政治と祭祀は常に連続せず寸断されてきたのであって、「狭義の大和民族」が後生大事にする政治と祭祀の連続性の枠組みに加わる必然性は全くないわけです。
ドイツとオーストリアも同じドイツ民族だと言われますが2つの国になってるように、別に何らかの定義で同一民族だからと言って、同じ天を仰がなければいけない必然性はないわけです。

右翼の人達が、「大和民族は宿痾として、政治と祭祀を完全に分断することはできないのだ」といった趣旨の主張を展開するのならば、残念ながら今の日本は大和民族だけの国家ではありませんし、数百年同じ祭祀を共有してきた地域だけで構成される国家でもありません。
にも関わらず、政治の場に祭祀を交えるのが妥当と考えるのであれば、なぜ大和民族以外も同じ祭祀を共有しなければいけないのか、その論理的な説明がなければいけないと思うのです。
あるいは、政治と祭祀が融合している地域と、そうでない地域をきっちり分けるとか、解はいくつもあると思いますが、そういう矛盾に答えを出すことに対して、右翼は逃げているんじゃないかと言う感じがします。
例えば、先にも書いたように解はいくつでも考えられると思いますが、もし私が右翼なら、こんな主張も論理的にはありじゃないかと思います。

  • 今の日本の領域を、北海道共和国、日本皇国、沖縄共和国の3国に分けた連邦国家とし、外交・軍事は連邦が受け持つ
  • 日本神話に記された大八嶋の領域、本州以南薩南諸島以北に関しては、大和民族の祭祀と政治の融合を可とする。
    日本皇国閣僚の公的神社参拝も自由だし、神道祭祀行事への行政参加等も自由である。
    他民族の居住や他宗教の信仰の自由は全く否定されないが、政教分離されていないことに対する異議申し立ては不可とする。
  • 北海道共和国、沖縄共和国に関しては、大和民族の祭祀を優先させる論理的根拠はないと考え、政治と祭祀の分離を徹底する。
    もし政教分離に反する疑いが生じた場合は、日本皇国と国家的に分離した意義徹底の必要上、厳し目の方向で処断する。

...まあ無茶苦茶だと自分でも思いますが、筋は一応通ってるんじゃないかと。

こういう、大和民族以外に生じる問題に論理的説明を与える責任をガン無視して、日本国=大和民族みたいな主張しか右翼がしないので、アイヌ・沖縄問題というと左翼が取り上げる、大和民族とアイヌ・沖縄の間はうまくいっているのに、ことさらにつまらん事を騒ぎ立てて政治利用しようとする動き、として一般に理解されてしまうんじゃないかなと思います。
大和民族が「歴史だから」「伝統だから」という理由で社会機構に組み込んでくる大和民族の祭祀は、明らかにアイヌや沖縄の「歴史」「伝統」「祭祀」と相反するのに、そのことに対しては全く無関心で、「空気嫁」の無言の圧力で同化を強制してくる。
で、なまじ「物理的暴力装置」は使ってないだけに、それに対して反抗や異議申し立ての動きがあると、「反国家」「過激分子」のレッテルを貼って、申し立てた側に非があるような扱いにする。
これならまだ物理的衝突がある方がまだマシで、非暴力ではあるけれどそれ以上に重い圧力で、無関心による民族文化抹殺を図ってくる。
それなんて山形マットリンチ殺人?
すばらしいエスニッククレンジング手法だなと思います。

まあ、今回は政治と祭祀の融合を中心に話してきたけど、教育とかだってそうで、小林よしのりとか、日本神話は面白く、また自分達の祖先がどのように世界を見ていたか、ということが学べるから、歴史は神話から教えるように戻すべきだ、みたいな話をしていたけど、それなら「大和民族学校」みたいなところで教えるならともかく、「日本国家」の教育として教えるなら、天照大神と並んでアマミキヨオキクルミカムイのことだって教えないとおかしいんだな。
そもそも神話とか以前に、今の日本の歴史教育では、阿麻和利ノッカマップの悲劇も教えていないわけですけども。
別に天皇制がどうとか、靖国参拝とか憲法9条とかある意味どうでもいいんですが、やれ「自虐史観で日本人の精神は退廃していった」「神話・歴史・道徳教育などで、正しい日本国民としてのあり方を」みたいな論議が巻き起こる割には、その自分たちが日々の無関心で押し潰そうとしている他民族の神話・歴史・道徳については、無関心の無頓着状態で、そういうのにイライラくるんですよね。
せめて、「正しい日本国民」とか言わず、「正しい大和民族」とか言えないのかと。

1エントリ・1アイヌリンク

北海道のアイヌ語地名

以前読んだアイヌ語地名の本の書き出しによると、高校生に「北海道の地名は大半がアイヌ語起源だ」と話しても、「そんなわけねーじゃん、だって漢字で書いてあるべ?」みたいな認識の子もいるらしい。

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