2010年02月22日

すこし先のARに必要な方向性3つ

Posted by nene2001 at 14:11 / Tag(Edit): AR / 1 Comments: Post / View / 0 TrackBack / Google Maps このエントリーを含むはてなブックマーク

別にARの専門家でも何でもないのだけど、位置情報のことはある程度判ってる立場から、今後のARに必要になるのでは?と思うことを3点ほど。
これまでBlogWrite使って来たけど、Mac使い始めたのでectoに乗り換えたので、投稿テストも兼ねて。

視野を計算するのではなく、視野から情報を得る方向性に

セカイカメラはもちろん、iPhoneやAndroidで今出て来ているARアプリケーションは、みんな情報を座標で管理して、その上でデバイスの位置と方向を判定し、画面に重畳する情報を計算する路線ですが。
今はまだそれしか実現方法がないだろうから仕方ないとは思うけど、正直その方法だと誤差が大きすぎるだろう。
GPSは数mから数十mは平気でずれるし、電子コンパスもそこまでの精度はない。
GPSの精度向上は、準天頂衛星IMES等で向上はするだろうけど、それでも数cmから数十cmはズレるだろう...数cmはともかく数十cmのズレは、現実に拡張現実を重畳するソリューションとしては致命的だろう*1

一番難しいのは垂直方向の精度だろう。
俯角・仰角センサの精度もさることながら、実は高度だけは、正確なその地点の高さをデバイスだけで取得することはできない。
以前に一度記事にしたことがあるように、GPSから取れる高度は回転楕円体という仮想地球面からの高さなので、実際の海抜高度に直すには、ジオイドという、それぞれの土地で用意された基礎データを用いて、補正計算する必要がある*2

結局、視野とそれに重畳する情報を、視野以外の情報から計算して導こうとするから、誤差が積み重なって『ショボい』AR体験になってしまうわけだ。
マジで『電脳コイル』の世界を目指すなら、現状のアプローチでは難しいのではないかと思う。
視野と重畳する情報であれば、視野から情報をもらってしまえば、得た情報をそのままその情報の発信源に重ねれば、原理上ズレることはあり得ないので、リアルなAR体験になるはず。
そのような技術になり得るものは存在していて、以前も採り上げた事のある可視光通信だ。
可視光通信というと、今実用化されているところでは、専用の受光素子を使った赤外線通信的なアプローチのイメージしかないかもしれないが、カメラ等を受光素子として、複数の情報源から情報を取得し、かつ情報の発信方向も特定するような技術も進んでいる。

もちろん、可視光通信だけで全ての情報を配信しようとすると、情報の数だけ通信源を用意しないといけないので、現実的ではないとは思うし、視野を構成する情報だけでなく利用者の自位置も大事な情報なので、GPSや電子コンパスが使われなくなる、ということはないだろう。
むしろ、可視光通信は単に視野上の情報の位置が得られるだけでなく、情報上に発信源の位置や高度を載せれば、受信者が位置測量を行う上での情報源にもなり得る。
現在ケータイがGPS衛星とケータイ基地局とのハイブリッド測位を行っているのと同じ感覚で、将来の可視光通信対応端末はGPSと可視光通信のハイブリッド測位に対応したりするんじゃないだろうか。

まだ現時点では実現は難しいと思うので、将来本当に形になる際に、採用されているのが可視光通信かどうかは判らない。
もっと進んだ技術が採用されている可能性もあるけれど、いずれにせよ、AR技術がもう一歩リアルさのブレークスルーをするには、『視野から情報を得る技術』は、避けて通れないのではないかと思う。

屋内位置情報を記述する、汎用的な仕様を

まあ屋内とか言わなくても屋外でも、現実空間に重畳する情報をどう記述するか、例えば3Dモデルを記述するなら、どういう仕様を標準にして、どちらを向いているかをどのように記述するか、とかの標準を決める事は必要だと思う。
しかし、実態をどう記述するかはともかく、『位置を記述』するというだけであれば、屋外の情報に対してはWGS84の経緯度ベースで記述して問題ないだろう。

問題は屋内の情報。
まさかARが屋外だけをターゲットにしているとは思えないし、かといって屋内のエアタグが屋外から見えたり、 逆に屋外のエアタグが屋内から見えたりしても、興冷めだろう。
しかし、情報の管理が経緯度ベースで行われている限りにおいては、建物の壁とか天井とか、そういった視線を遮断するもの全ての情報がシステムで管理されていなければ、屋内屋外でのタグの出し分け等無理な話だ。
いや、仮にこの世の全ての地物情報がシステム内で管理されていたとしても、現実的な速度で視線の遮断計算を行うのは無理だろう。

考え得るのは、屋内ではGPS等汎用的な測位デバイスは精度が低くなって利用不可になってしまうので、WiFiを用いたPlaceEngine等屋内に有効な位置測位手法に切り替え、その位置特定デバイスからその建物独自の屋内専用座標系で情報を返してもらうことで、屋内/屋外の情報切り替えとその情報重畳に用いる座標系の切り替えを行うという形だ。
実際、PlaceEngineは、屋内での位置を特定するソリューションとして、実証実験を行ったりしているが、 その時の屋内情報管理を経緯度を使って行ったとはまさか思えない。
その時に使ったような、屋内の位置情報を定義し記述する仕様を、どのような場所や建物にも適用できるような形で汎用化し、それを使って屋内の情報を管理できるようにする必要がある。

中央集権ではない、分散したサイバースペースの構築

ARで現実世界に重畳するサイバースペースは、なぜか皆、中央にサイバースペースの森羅万象を司る巨大サーバがいて、それに接続するイメージを多くの人が抱いているようなんだけど。
でも、サイバースペースが模しているところの、リアルスペースの森羅万象は、そんな中央集権で成り立っているわけじゃないよね。
世界の片隅で起こっている現象は、遠い宇宙の果ての宇宙意思にお伺いをたてた結果、というわけではなくて、現象の起こった全くローカルな局面での、物質と物質、粒子と粒子の物理的相互作用の結果として発生している。
なんでサイバースペースだけ、中央集権でないといけないのか?

そういう疑問を持ってくると、いろいろ中央集権方式のサイバースペースで生じる、おかしな点も見えてくる。
まだ現状レベルの、情報を検索してきて重畳する程度の一方通行のAR(或いは双方向であっても、情報を仲介しての双方向性でしかないもの)ならばさほどおかしくもないのだけど、将来的にデバイスノード同士がAR空間内でインタラクションを起こすようなレベルになってくると、そのおかしさが顕著になってくる。

今目の前に存在する、別ノードと今すぐインタラクション起こす必要があるのに、なんで遥かネットの彼方にあるサーバ様にお伺いを立てないといけないのか。
今すれ違うノードと瞬時的なインタラクションが必要なのに、なぜネットワークの遅延や中央サーバの過負荷、果てはネットワーク圏外やサーバダウンの影響を受けないといけないのか。

どう考えても、インタラクティブなAR経験を本質的に実現しようと思うと、3G回線で回線確保して中央サーバで集権的に処理、という発想は破綻する。
もっと、末端ノード同士がWifiやBT、可視光通信なんかの近接通信手段で、ローカル的にインタラクションを解決していかないと無理だろう。
全体の整合性は、ローカルでの結果が段階的に波及していけばよいのではないか。
その意味では、少し前に話題になった、SUICAのDNS的分散システムに近いような発想が、将来のAR実現インフラには必要になってくるのではないか。

また、なんか、そっちの方が楽しそうでもある。
中央サーバで一元処理されている限り、AR世界は 予測可能なものにしかならない感じがするが、ローカルでの処理→波及モデルだと、ARの世界でもバタフライ効果のようなカオスな振る舞いが見られるようになるかもしれない*3

これらの本質を追求していくと、新しいガラパゴスが生まれる可能性も

これら3つの、本質的AR実現のための方向性のうち、最後のを除いた2つ(可視光通信や屋内位置情報)は、既に日本では「シームレス測位*4」というキーワードで、gコンテンツ流通推進協議会等で議論されている。
官や通信キャリアなんかも参加しているこのコミュニティで議論されていることは、準天頂衛星にせよ、可視光通信やIMESにせよ、非常にゆっくりとだし派手さもないが着実に、実現化していっている。*5
が、これらの技術的進歩は、最先端ではあるが世界に共同歩調を強いることは難しいので、日本独自の発展になりかねない。
そうすると、またこの辺の機能やインフラに対応したデバイスは、世界標準を目指すiPhoneなんかには搭載されず、日本の独自デバイスのみ準天頂衛星対応とか可視光通信対応機能が付いたりと、また世界標準とは異なる日本ローカルの独自進化を遂げかねない。
ちょうど、日本のガラパゴスケータイは、iPhoneよりよほど早く、10年近く昔から位置情報・GPSに対応していたり、電子コンパス対応機種もあったりしたけど、 独自進化し過ぎていてガラパゴス化した、と言われているように。

そうすると、今後ARに取り組む主体は、次のような究極の選択を強いられるようになる可能性がある。

  1. 世界標準でないものはクソ、日本独自のものなどクソ、というスタンスを崩さず、世界標準のデバイスやGPS、電子コンパス等の技術だけを使って、ずっと「ゆるふわ」ARを続けていく
  2. ARの本質を追って、日本独自の技術・デバイスであろうと取り入れて本質的なAR体験を追及していくが、世界からは孤立していく

或いは、別の選択肢もあるだろう。

  1. 日本の独自進化も受け入れつつ、世界の標準も意識し、また日本の進化を世界に紹介し、積極的に両者の融合を模索していく

どれを採るかは...AR取組み主体の選択次第。

 

*1) もちろん、情報までの距離や粒度にもよるけれど。
*2) 新しく実測して作るデータであれば、重畳情報の方の高度情報を、海抜でなく楕円体高度で揃えるというアプローチもあると思う。
*3) まあ、妄想レベルだけど。別に現時点でローカル分散システムを採っているSUICAが、カオスになっているわけでもないし。
*4) GPS/Wifi測位等のデバイス切り替え的シームレス、屋内/屋外位置情報の切り替え的シームレス等、シームレスの意味は多義的(と、私は理解してます)。
*5) ただ、念のため書いておくとgコンテンツ評議会が準天頂衛星等の実現主体である、というわけではない。gコンテンツは今後実現することについて、その利用法等について議論する場。

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Posted by: kossy at 2010年02月22日 16:37
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